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ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
 
 

ある異常体験者の偏見 (文春文庫) [文庫]

山本 七平
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

戦前戦後、日本人は一貫して“意見の多様性の欠如”という軌道を走っていると説く著者が、そこからの脱却の道を追及する警世の書

内容(「BOOK」データベースより)

「強大な武器を持っていた日本がなぜ中国に敗れたのか。それは偶然に負けたのではなく、負けるべくして負けたのである…」この発言にショックを覚えた著者が展開する一大論争。みずからの異常体験をもとに論理術のかぎりを尽して、日本人を条理に合う人間と合わない人間に峻別すべきことを緻密に証明してみせてくれる。文芸春秋読者賞受賞。

登録情報

  • 文庫: 315ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (1988/08)
  • ISBN-10: 4167306077
  • ISBN-13: 978-4167306076
  • 発売日: 1988/08
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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By 江口哲学 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫|Amazonが確認した購入
私は今から20年ほど前、本多勝一に強い影響を受けて山本七平を胡散臭い人物と思い込んだため、長い間、彼の著作に触れることがなかったのである。今頃になって読み出したのであるが、一番強く感じる本多勝一との違いは、思想そのものよりも説得力の強さである。それは、自らの体験を冷静な分析と優れた洞察力によって思想化し、それを再び自らに問いかけることによって獲得した説得力であると言えるだろう。

日本人は戦後、大東亜戦争による国家滅亡の危機の反省として、その原因を単に戦争そのものや一部の軍国主義者のせいとしてしまい、そこで思考停止して、それらを排除することだけに力を注いできたわけだが、日本人の思考方法や行動パターンについては全くと言っていいほど反省してこなかったので、軍隊語で平和論を語るという愚を犯し、未だに様々な戦後神話に取り憑かれている。

本書は、この国家滅亡の危機にまで至らせてしまった日本人の思考様式を見事なまでに分析したすばらしい著作である。発行から30年以上たった今でも少しも色褪せることはない。日本人必読の書と言っても過言ではないだろう。

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41 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
「今ある姿」は、現実構文の内容である。そして、「あるべき姿」は、未来構文の内容である。「今ある姿」を「あるべき姿」と比較すると、現実批判ができる。英米人とも、話を合わせることができる。
だがしかし、日本語には未来構文がなく、「あるべき姿」がない。それで、現実の中から比較のための (絶対) 基準を捜し出さなくてはならない。

実況放送・現状報告の内容からは、絶対基準は得られるはずもない。
こうして「今ある姿」対「今ある姿」の横並びの形式の比較にすれば、日本人の頭の中にも抵抗なく入る。

山本七平は、「ある異常体験者の偏見」の中で、「日本軍が勝ったとなればこれを絶対化し、ナチスがフランスを制圧したとなればこれを絶対化し、スターリンがベルリンを落としたとなればこれを絶対化し、マッカーサーが日本軍を破ったとなればこれを絶対化し、毛沢東が大陸を制圧したとなればこれを絶対化し、林彪が権力闘争に勝ったとなれば『毛語録』を絶対化し、、、、、、等々々。常に『勝った者、または勝ったと見なされたもの』を絶対化し続けてきた―――と言う点で、まことに一貫しているといえる。」と述べている。

それにつけても、マッカーサーも、帰国後に行われた上院軍事・外交合同委員会の証言で、「日本人はすべての東洋人と同様に、勝者に追随し敗者をさげすむ傾向を持っている。」と興味ある発言をしている。自己の「あるべき姿」の内容を持つことのない我々は、勝者は常に何事においても、比較の絶対基準になると信じているのであろうか。判断が世俗的であること限りが無い。

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形式:文庫
本書は、第二次世界大戦で日本が中国に敗北した原因に関してなされた元毎日新聞編集委員、新井宝雄の分析に対して、著者が「ショック」を受けたことを告白することから始まる。

新井氏は日本の敗因について曰く。
「・・・私は・・・『深い反省からこそ多くのもの生まれる』と考えている。
たとえば強大な武器を持っていた日本がなぜ中国に敗れたのか。それは偶然に負けたのではなく負けるべくして負けたのである。それは、なかば植民地化された中国を、独立化したいという中国民衆の燃えたぎるエネルギー、いいかえれば反帝、反封権の進んできた中国力革命の力量によって負かされたのである。・・・」

これに対して著者は、
新井氏の日本敗因に関する発想は、戦時中の日本軍、日本人の発想と比べれば、
「・・・新井氏の『日本軍』というところが『英米軍』にかわり、『民衆の燃えたぎるエネルギー』が『精神力』にかわっているにすぎないのではないか。・・・」
と。

これを受け、本書が発行された頃、日本で「進歩的文化人」と称されるマスコミを中心にを覆っていた文化大革命礼賛、追従の「空気」は、結局のところ、戦時中の日本を覆っていた「空気」の裏返しに過ぎないのではないか、と問題提起する。

そこから著者は、縷々と新井氏と議論を進めていく。

冒頭に著者が受けた「ショック」とは何だろう。

それは、新井氏の論文の裏に見え隠れする日本人に共通する何かではないか。

重要な問題に対する客観的な原因究明を先送りにし、「あいまいなきれいごと的発想」でその時点の「空気」に合わせ、自身の良心を示そうとする態度。

例えば、新井氏の反論文の題名のに使われる「人間」という言葉である。

「重要なのは人間である」?。日本人ならば誰しも少なからずクラッとくる抽象的なマジックワード(山本七平氏の表現を借りれば、実質的な意味が不明OR/AND意味を持たない「空体語」)を振りかざしながら肝心の議論から目を逸らさせようとする欺瞞的な態度。

このような抽象的な思考様式と行動様式に乗って「正直者は必ず報われる!!」「正義は勝つ!!」という類のどこかいかがわしくも文句のつけようがない標語を掲げながら、自爆するまで、行けるところまで突撃しようとする態度こそは、戦時中に特攻隊員など多くの国民,若者を苦しめた元凶であり、そしてその基本的態度は戦後も全く変わっていないのではないか。

日本だけで200万人という犠牲を被った挙句の総括が、このザマか!!という「怒り」だったのではないかと思う。

その後、新井氏と山本氏との間に交わされた議論、そしてそこで示される山本氏のさまざまな観点からの考察は、今でも我々に非常に強烈な示唆を与えてくれるものと信ずる。

当時の「空気」を想像するに、山本氏の本書での考察は当に“KY”と思われ、その分析・追及が鋭ければ鋭いほど、社会的な波紋は想像以上だったろう。

小生が思うに、著者が本書を通じて一般社会に投げかけたかったであろう疑問は・・・

本来、客観的であるべき事実の探究が、何故特定のイデオロギーによって左右されてしまうのか?
何故、進歩的文化人といわれる人々は左に倣えで南京事件から百人切りを肯定し、そして当時の文化大革命の成功を喧伝するのか、逆に右翼といわれる人々は右へ倣えそれらの事実を否定するのか。
これは偶然の一致か?
いかにも摩訶不思議でおかしいではないか?

一つ一つの事実の検証が特定のイデオロギーによって左右されてよいのか。不偏不党の観点から客観的になされるべきではないのか。

という至極自然で素朴な疑念であると思う。

氏の一貫した冷徹な論理展開に、多くの人々が“詐欺師”“右翼”等と一方的な罵倒に徹してしまう心情も理解できる。
なぜなら氏の論を受け入れればそれは即ち自分の社会的なレゾンデートルが根本から崩壊してしまうと思われるからだ。

その後、山本氏の考察が上記のようなレッテル貼りによって黙殺されていったとしても不思議ではない。

戦後日本における一巨人の思考方法を学ぶ上でも、必読の書として強く推薦する。ぜひ、諸兄ご自身の頭で是非をお考え頂ければ、様々な貴重な示唆が得られるもの信ずる。
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