冒頭は主人公である「夫」の手裏剣マニアへの開眼から始まる。それは、一冊の手裏剣入門書との出会いから始まる。
この現代社会において、普通の人たちは、手裏剣で身を立てて行こうなどとは決して思ったりしない。
「夫」が常軌を逸した手裏剣マニアとなるまでに想像を絶する何かしらの苦難があったはずだが、本書ではその言及はない。
むしろその異常で当たり前の日常が、「妻」の目線からコミカルに描かれている。
特に(この現代社会において)手裏剣の稽古をすること自体の難しさ、手裏剣を通じた一般人との微笑ましい、時には剣呑な
触れ合いや、また道場を開くまでのノウハウを、親しみやすいマンガのタッチでリズムよく表現されている。
このように本書は「手裏剣」というどこまでもシュールで物騒な行為について、(くどいようだがこの現代社会において)真
剣に取り組んでいる猪突猛進型の夫と、どこまでも天然な妻とのまじめにふざけた人生の一コマを通して知ることができる他
に類を見ない一冊である。
また、手裏剣を『夢』という言葉に置き換えても別のレッスンが含まれているような印象があった。
『夢』を真剣に追い求める姿がどこか滑稽に見えるようになった現代だからこそ、滑稽なりにも真剣な夢追い人のある種の暴
走を味わうのも一興かもしれない。