相変わらず、思いやりの欠片もないような語り口だ。しかし、それにどうしても反論し得ないほど、まったく隙を見せない高い知性を感じさせる文体…正直、このひとは怖い。怖いが、やはり読んでしまう。読まされてしまう。何故なら、面白いからだ。自分というものの前世の記録がそのまま残されているとしたら、そしてそれが現在の価値観からは考えられないほどに瑣末な事象に捉われた書物だとしたら、我々はそれをどのような感情を以って読み進んでいくのだろう? ダニエルもまた、やはり過去のダニエルを理解することは出来ない。理解することは出来ないながらも、そんな過去のダニエルに、何処かで惹かれている。それこそが、『死』を失ったネオ・ヒューマンが渇望する『生』だったのかも知れない。