日本プロ野球史上、現役選手やコーチの早世例がないわけではない。だがキムタク(敢えてこう呼ばせてほしい)のように、ユニフォーム姿のままグラウンドで倒れ、そのまま不帰の客となった例を評者は知らない。それほどの衝撃であり、誰しもが一様に絶句したのも肯ける。実際、まだ信じ難い。
故人にはたいへん失礼ながら、彼くらいの実績で終わった選手はいくらもいる。引退後にDVDを出して貰える選手は、最近こそいくらか増えたが、それでもひと握り。ましてキムタクは・・・この“事件”がなければ企画すら出なかったというのがホンネではないか。
だが、キムタクの想いがこの世に留まっているとしか思えない“奇跡”が起きた。このDVDの付録CD、10年3月2日のNPB新人研修会における講話の肉声だ。
内々の研修の講話など、ふつう録音しておくものだろうか。新聞等で内容が一部紹介されたが、記憶力のいいひとが懸命に思い出して要旨を再現した程度に思っていた。
慣れない人前での喋りは緊張がありあり。だが、間違ってもエリートと言えないがゆえに懸命に居場所を求め、チャレンジし続けた経験と思い出話を、訥弁ながらも熱い口調で語っている。問いかけを挟んだり笑いを取ったり、意外なほど(失礼っ!)喋りが上手い。
これほど気持ちが籠もった話を聴いて、心に何も残らないヤツがいたら、絶対嘘だ、人間ヤメロ、くらいは言いたくなるな。
感動したっ!
もちろんDVDも感涙もの。『伝説』のイニングはほぼノーカット。ソフトバンク戦は大道弾も含めて、追悼試合での谷の劇弾は初球からしっかり採録。名言連発のお立ち台場面も数多く収録されている。
こうなると、余計な話と百も承知だが、個人のDVDでこれだけ充実したものが作れるなら、半年間の激闘を回顧するDVDが僅か40分なんて、絶対におかしいだろ、もっとよく考えろよ、と注文しておきたい。