今までのCDジャケットでは施されなかった、オリジナルLPのキラキラ箔押しがきちんと復刻され、音質もややヒスノイズが多いですが、芯のある太めの音でオリジナルのニュアンスをうまく再現しています。
楽曲は旧知の星勝を編曲のメインに据えた1〜5曲目(LP発売当時のA面)がお見事。リアルタイムでは少々「歌謡曲的」過ぎると感じた「ジェラシー」や「風のエレジー」は、改めて聴き直してその歌詞の深さに吸い込まれます。4曲目、スタジオで歌いながら詞を即興で作ったという「My House」は圧巻の一言。そして、A面最後の「もうじき夏が来る」(編曲:安田裕美)は、コントラストの強い焦熱のなかで痺れるようなセミの声にやるせなさだけが募ってくる、福岡の夏のイメージを描ききった大傑作です。
それらに比べ、アレンジを鈴木茂、矢野誠らに任せたB面(6〜10曲目)は肩の力が抜けた、というか、やや散漫な出来。しかし、その中でもシンセサイザーの音色にこだわった「Yellow Night」や、歌詞カードに歌詞の載っていない、ビリー・ジョエルを彷彿させる終曲の「ナイト・メロディ」は、まばゆい光を放っています。
(ちなみに「Yellow Night」のタイトルの由来について、当時全盛のYellow Magic Orchestraの影響を、陽水がYMOメンバーである坂本龍一のFM番組に出演した際に認めています)
このディスクは、次のアルバム「Lion & Pelican」のようなマストアイテムではないかも知れませんが、陽水の描く「寂寞」を愛する人なら必ず手元に置いて欲しい佳作です。