惜しい、の一言に尽きます。
時代物、妖怪物の雰囲気を持ちながら、実際はそことは違う部分に意図を置かれている作品だと思います。
読み手によって非常に評価が分かれてしまうのではないでしょうか。
時代物好きからすると時代考証が今一つしっかりしておらず具体描写に欠けます。会話表現でも首をひねる向きがあるやもしれません。
一方で時代物に触れた経験が少ない若年層にとっては、敷居が低くつっかかることなく読めるはずです。
特に時代物特有の言い回し、語句というのが目立たないあたり、作者個人の筆力で雰囲気が出せています。
良質な時代物を読んできた身としては判断に迷う部分でもありますが・・・。
また、妖怪についても既存の妖怪像からやや外した部分に設定を作っているあたりも悩ましい。
とはいえ、定義から練りこんだものなので違和感はありません。よりカジュアルで少年漫画的な妖怪になっています。
そうした部分を気にしなければ、物語の根底に流れるテーマ性が見え、感情移入もできると思います。
読むにつけ、アウトサイダーへの鎮魂歌という側面が見えてきて、純粋なエンタテイメント作品として成立していることがわかります。
何よりそれを支える作者の筆力に驚かされました。これで21歳?とは。
剣劇の部分やうなぎのくだり、たぬきのくだりなどは緩急のつけ方が上手です。
伏線も気持ちよく回収されます。反面、地の文が走りすぎかなとは思いますが。
加えて、作者のブログやツイッターとの落差にも驚かされました。そこに惹かれて読んだら、読み込んでしまいました。
ブログやツイッターの調子が愉快なのでコメディ調のものかと最初思いました。
ひとえに、言葉を選ぶセンスが備わっているのかと思います。
あとは、イラストでしょうか。商業的には損をしていると思います。
せめて電撃の某時代劇くらい、とっつきやすいものだったらと思ってしまいます。
ここも惜しい。
いろいろ含めて一昔前の少年漫画が好きな方は読んで損のない作品だと思います。
年齢とイラストの残念さを考慮して、★4