「…どうして。三十年も生きてきたのに、一度も信頼出来る人に出会わなかったの?」「ひとりでいようとすれば、案外いられるものなんだよ」高校生の千歳と予備校教師の能登の会話が胸に刺さってせつなくて苦しくなりました。
能登はちょっとかわっていて他人と繋がろうとしない(自分の教え子の名前すら覚えようとしない)人で、同僚の教師や生徒にも一歩引いた目で見られて孤立している。でも能登が他人に心を開かないのはその相手も自分に心を開いていないのを敏感に感じとっていたからなのだと思います。大人なのだから社交辞令でもうまくやらなきゃいけないのだろうけど、幼少期の辛い経験から防衛本能が働いて、心が傷つかないように閉じてしまったのだと思います。
心を閉じていると楽な部分もあるけど、ふとした瞬間に深く孤独を感じて、苦しくて悲しくなってしまいます。能登が千歳と出会って、何気ない会話を交わしたり、自分が感じたうれしかった事を二人で共有して心を開いていく姿に心が温かくなって、なんだか励まされました。
読み進めるうちに繊細な感情表現に胸が苦しくなったり、もどかしくなったりもしましたが、クスっと笑えるかわいい場面や胸がキュンとする場面もたくさん散りばめられているのでせつない話が苦手な方にもお勧めです。