今作の主人公ジョーにはモデルがある。
実在のジョーは、フィリピン軍属の父の帰国後、幼少から沖縄人の母ひとりで育てられた混血のヒットマン日島稔。
佐野眞一の傑作ノンフィクション「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」に、その数奇な人生と生き様が語られているので、詳しくはそちらをお読み頂きたいのだが、彼は、沖縄やくざ抗争史に残る沖縄最大の暴力組織沖縄連合旭琉会組長だった新城ミンタニ―を射殺した男である。
服役後やくざ社会からきっぱりと足を洗い、今は堅気で暮らす日島は、佐野とのロング・インタビューでも窺えるように、幼少から二重の差別と偏見に耐えながらも、実直で優しい性格であり、映画でジョーを演じた時任三郎とイメージが重なって懐かしい思いがしたものだ。
佐木隆三の原作は未読だが、今作は、その映画化に当たり、壮絶なバトルが繰り広げられた。
記憶しているだけで、今村昌平や神代辰巳、深作欣二も映画化を切望していたのではなかったか。
今村が作れば、人間の奥底を凝視しつつの社会派人間ドラマ、神代ならば、同じく人間を凝視しながらもやはり粘着性ある男女のドラマ、そしてもちろん、深作ならば、ぎらぎらとしたハードなアクションのような肌触りのドラマになったんじゃないだろうか。(実際、深作は、松田優作主演で企画していた)。
で、並みいる著名監督たちを抑えて映画化にこぎつけたのが、これまた名監督の藤田敏八。ゆえに、映画は自然と青春映画としての輝きを放つ事となった。
以上、作品のアウトラインのみを語ってしまい恐縮だが、公開からはや27年。細かなディテールは忘れてしまったが、紺青な海と空に飛翔する海燕のカメラ・アイが心に残る。
若者はいつの時代でも、どんなにみっともなくても、生き生きと人間的であり、その部分を掬いあげたような感覚は切ないし共感もする、時任のみならず、藤谷美和子も可愛くて印象的だった今作。
廉価化を機に是非再見してみたい。
あの頃のような感想を未だ持てるのか、分からないけれども、、、。
(追伸)先ほど触れたバトルを戦わせた4人の名監督、今や全員、逝去されている。
時代の移り変わりは早いし、儚いが、それにしても、淋しい話ではある。