あまり独自の映像スタイルにこだわる監督の映画には夢中になれない、という私自身の好き嫌いもあるんですが、加藤泰さんのスタイルである極端なローアングルの固定画面と長回しには、とくに必然性があるとも思えません。却ってあれをうっとうしく感じることが、ままある。
この映画などは、モダニズム化される前のネチネチしていた頃の乱歩を、なにがなんでもあの潔癖症気味のスタイルで撮り切ろうという強固な意志すら(題名にわざわざ「江戸川乱歩の」と付けるところにも)感じて、むしろ清々しいほどではありましたが、どうにも中身とスタイルのミスマッチ。それに、主演があしたのジョーと平次のカミさんでは健全すぎて…。大友柳太朗はさすがの貫録でいい味出してるけど、なんだか滝沢修にそっくり。どうも、1970年代以降の加藤泰さんの映画は、配役に首をかしげたくなるようなのが多い。
加藤泰さんの松竹作品のうち、DVD化されてるのは、これ以外では「人生劇場」と「花と龍」ですが、どちらも冗長なだけで出来はイマイチ。
松竹だけでなく、東映・新東宝作品を通しても別次元的に出来がいい松竹作品「男の顔は履歴書」と「みな殺しの霊歌」は、DVDになってないんですよ。(時代劇・任侠映画をメインに監督されてきたのに、これらは2つとも現代劇。どうやら、現代劇に時代劇・任侠映画的な主人公を登場させて、頑固な生き方を通させると、作品にもいい味が出るようです。要するに加藤泰さんは、ご自分同様、頑固な人がお好きなんですね。)
再発もいいけど、別の作品も出してもらいたいなあ。
「陰獣」だけだったら★三つですが、上記2作品のDVD化への願いの分を足して、★五つ。
追記 「みな殺しの霊歌」、2012年2月にDVD発売とのことです。「男の顔は履歴書」も、続けてお願いします。