バイタリティ溢れる人物の描写が秀逸な森崎東監督のデビュー作。
森崎氏は初期、山田洋次監督の脚本を担当することが多く、「喜劇 女は度胸」と初期山田作品を見ると、森崎氏が大きく関与していたと推測される。いわば、二人三脚、二人の出発点は似たようなところにあったのかも知れない。それは、「男はつらいよ」のごく初期の頃まで続くが、山田氏が彼なりの「寅さん」像を確立したころ、二人の作風は離れていったのではないかと思う。
山田監督が庶民の生活を哀感、同情を持って描き、家族の絆によりどころを求め、ハッピーエンドに未来を託すのに対し、森崎監督は同じ庶民でも、虐げられてもへこたれないバイタリティを描き、その不屈な部分によりどころを求め、家族も未来−これから−に向かって突き進む。
「女は度胸」は、そんな森崎監督の個性が十分に生きている傑作。歯切れの良いテンポ、展開のリズム感は初期山田喜劇より上を行くと思う。登場する人間たちもバイタリティに溢れる。渥美清の兄も「山田寅さん」とはまた一風違った雰囲気を見せる。しかし、やはり女達のたくましさ、度胸が印象に残る。結構気が強い倍賞美津子、「コールガールだって人間だ」と言い切る沖山秀子、そして最も度胸があるのが母親の清川虹子。
ある意味、山田監督が描かない(描けない)部分を森崎監督は持っているのではないかと思う。
清川虹子によれば、彼女と渥美清はスケジュールの都合で全然顔を合わせず、家族のシーンも別々に撮影されたという。そんなことをまったく気づかせないカット割りと編集の巧さ。
森崎東はもう一人の天才だったのだと思う。