この映画の中で、とても印象に残るのが西伊豆・松崎の風景。ヒロイン・つぐみ(牧瀬理穂)の家である海辺の旅館も懐かしい雰囲気がただよう。安田伸と渡辺美佐子の両親も松崎の景色や旅館の風情にマッチしている。
前半はこの風景の中でのつぐみの様子が綴られる。美しい景色の中でのヒロインの自然な描写は雰囲気がある。このあたりの描写は文章ではうまく伝えられないが、ナイーブで自然で、市川準監督ならではの感性だと思う。牧瀬理穂の良さも巧く引き出していると思う。
(あまり説明をしない映画なので、原作を読んでいない人にはわかりにくい部分もあると思うが)
後半は一挙に展開が激しくなる。ある出来事がきっかけでヒロインの怒りが燃え上がり、病弱な体を顧みず無茶な行動をとる。その結果、寝込んでしまうのだが、ここでつぐみが自分を振り返ってのセリフが印象に残る。要は自分の我儘かげんに気が付くということだが、人は皆わがままで時にわかっていても無茶な行動をとってしまう。このあたり、自分の身に照らし合わせて共感した人も多いのではないだろうか。
大人になる前の心の微妙な変化、感性を描いた作品は多いが、市川準監督はこうした感覚を描くのに長けた監督だったと思う。その中でも「つぐみ」は松崎の風景の中で描かれた一際印象深い映画だと思う。