決して派手な作品ではないのに、その価値の底が知れない日本映画史に残る名作。
かつて荻昌弘氏が解説をしていた月曜ロードショーで何度も放映されていた作品が21世紀になって復活しました!!
作品全般を覆う黒い雲のような雰囲気、演じる役者さんの隙のない重厚な演技。
幾重にも重なり合ったストーリー。
なにより、見る人を驚かせる、ラストでの悲しすぎる謎解き。
決して派手な作品ではないのですが、日本映画史に残る傑作です。
数十年前の母親の言いつけを守るために殺人を犯し続ける女性の半生を軸に物語は展開します。
その裏には、かつての母の言葉がずっと付きまといます。
もちろんフィクションなのですが、戦争によって家族を、生活を、
そして自分の人生そのものを奪われた人々の悲しみが作品の根底に流れています。
特筆すべきが、陰の、そして真の主役の岸田今日子さんの驚異的な演技。
あの鬼気迫る表情、しぐさ、声は一度観たら忘れられません。
娘の頬に焼き鏝を当てるときに、目をかっと見開く一瞬。怖くて画面を正視できないほどです。
他にあんな表情ができる役者がいるでしょうか。
本来なら憎むべき所業ではあるのですが、母真由美から悲しさがにじみ出るのがわかる、
そこに岸田さんの天才的なすごさがあります。
女優というのはこういう人のことを言うのでしょう。
決してこの作品はホラーなどではない、人間は環境によってはここまで悲しい行動に出るのだ、
いつでもこんな世の中はやってくるのだということを私たちの脳髄に叩き込んでくる「人間」のドラマなのだと思います。