大宅賞を獲った「あの戦争から遠く離れて」(城戸久枝著)は、
自力で帰国を果たした中国残留孤児であるお父上(孫玉福=城戸幹)の物語と、
そのお父様の中国時代の軌跡を追う著者(城戸久枝さん)の物語が交錯する好著だった。
この「孫玉福39年目の真実」は、「あの戦争から遠く離れて」の外伝という位置づけである。
確かに「あの戦争から遠く離れて」の前半部分(城戸幹さん中国時代の物語)を
幹さん本人が語ったもの、という意味からすれば「外伝」かもしれない。
しかし、娘(城戸久枝さん)が描いた父(城戸幹さん)本人の手記だけに、
ものすごいリアリティを持って迫ってくる。
もはや「外伝」とはいえない。
城戸久枝さんの「あの戦争から遠く離れて」を読んだとき感動したが、どこかで、
「実際に、お父さんの幹さんは、表現できないような苦しみと苦悩を経てきたんだろうなあ」
と思ったものだ。
「書名」の「孫玉福」に「スンユイフー」という中国読みのルビが振られている。
それはおそらく城戸幹さんの強い意志のあらわれではないだろうか。
中国人・孫玉福として生きた20年間への強い誇りでもあると思う。
数奇な運命……とひと言で片付けるにはあまりに重い事実。
久々に読み応えのある手記だった。