1984年に筑摩書房から出た単行本の文庫化。
民話収集家・童話作家として知られる著者が、現代の民話62篇を集めて一冊としたもの。
現代の民話とは、昔の話、語り継がれてきた物語ではない。同時代の人々が現在進行形で生み出しつつある民話のことである。たとえば、臨死体験をした人が花畑について語ること、肉親の死が夢によって告げられたこと、火の玉を見た話など。
面白いのは、新しい要素と古い要素がまぜこぜになっている点である。一方ではテレビとか電話とか文明の利器が出てくるのに、天狗や火の玉が信じられている。話の構造自体も昔の民話と変わらないものが多い。
この仕事の成果のひとつは、現代の民話というものを通して、従来の民話研究を逆照射したことだろう。人間の心は、変わらないものだと示したことである。
ただ、本書に収められているのは、戦前・戦後すぐくらいの話がほとんど。いま、こういう仕事をやったらどんな結果が出るのだろうか。