第1章から5章までの各章の副題を並べると「エントロピー」「チャネル」「有限オートマトン」「メモリ階層と参照の局所性」「インタフェース」となる。どれも情報科学の基礎的な概念だ。最初に情報科学の創始者であるクロード・シャノンが定義した「情報のエントロピー」という概念を解説しているということだけでも、内容のハードさは想像つくだろう。それを「インスタントみそ汁が存在できるわけ」という実にうまい例えでかみ砕き、分かりやすく解説している。2章以降でも例えが多用され、最後の第6章では、チューリングマシン、ゲーデルの不完全性定理、NP完全問題といった情報科学の豊かな世界を読者にのぞかせ、量子コンピューターのような将来技術にも言及している。
「そのような原理的なことをユーザーが知る必要はない。パソコンは使い方さえ分かれば十分」という考え方もある。しかし、情報科学を概要だけでも理解することは、現在の社会が抱える問題、例えば住基ネットに代表される利便性とプライバシーの問題などに、自分なりの判断を下すことを助けてくれる。常に知識は力なのだ。
(ノンフィクションライター 松浦晋也)
(日経パソコン 2003/1/20 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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「情報がどうのこうの」とか「データが云々」と何気なく僕等が口にする言葉。これがいかに表面的に本質を伴わずに口にしていたかということを、この本は指摘してくれる。そんな、コンピュータの根っこの部分に触れられる希有な本です。コンピュータを使うすべての人にオススメ。
この本を読んだだけでは、特定のアプリケーション(たとえばMS Office)や特定の環境(たとえばWindows XP、MacOS X)の操作に詳しくなる訳ではありませんが、その背後にある本質を理解できます。そんなことを知らなくともパソコンを使うことはできると思いますが、本質を理解することはコンピュータという道具をよりよく使いこなす助けになるはずです。初心者の方には、普通の(特定のアプリケーション操作法が書いてあるような)入門書と共にこの本を読むことをおすすめします。そして、ある程度パソコンになれてからこの本に戻ってくると、より理解が深まるかもしれません。
初心者を対象とした本ではあるのですが、この本は既に「理解している」人にもおすすめです。むしろ、わかっている人こそ読むべきかもしれません。わたしは一応コンピュータにかかわる技術者でそれなりに理解しているつもりなのですが、この本から、特に「情報」に関して、新しい視点を得ることができました。あなたは、情報とは何か?ときかれて平易な言葉で説明できますか? もしそこで悩むのなら、たとえあなたがコンピュータの専門家であったとしても、この本を読んでみる価値はあると思います
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