綿は米テキサス州産だった。同州ラボック周辺の農地は現在、世界のTシャツの生まれ故郷である。綿作りのように単純な川上産業が、高度なサービス業中心の米国経済で繁栄し続けているのはなぜか。著者は歴史をひもとき、米政府の補助金制度、つまり200年以上にわたり発達してきた綿の生産・販売におけるリスクを緩和する政策が競争優位に影響していると分析する。
綿は遠く海を隔てた中国・上海で糸に紡がれ、布に織られ、Tシャツに縫い上げられる。18世紀に産業が興って以来、繊維・衣料品生産の単純労働は低賃金、長時間労働、粗末な労働環境に耐えて働く労働者が担ってきた。中国は労働者の移動を制限する戸籍制度の下で、従順な労働者を尽きることなく供給している。豊富な労働力と低い人件費により、現在、中国は世界の繊維・衣料品産業に君臨している。
Tシャツの「一生」の大部分に、政治による保護や介入が関わっていることを示し、グローバル化を引き起こしているのは市場ではなく政治や歴史であると結論づける。
(日経ビジネス 2007/02/19 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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20 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
自由貿易と雇用維持,
By moritats55 (愛知県東海市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実 (単行本)
面白い本でした。
Tシャツがどのように作られていくのか、アメリカテキサスの綿農家、中国の綿織物工場、そしてミトゥンバとして送られるアフリカタンザニア。 それぞれのところで働く人々を描きながら、その歴史、そして現在の課題を浮き彫りにしていく。 表面的な反グローバリズムを掲げるのではなく、自由貿易主義を課題はあるものの、肯定的にとらえる、その視点はとても好意的に感じられた。 自由主義アメリカの綿農業にこれほど分厚い保護主義政策があるとは思ってもみなかった。日本のコメ農業にも匹敵するような。 また、古着Tシャツがミトゥンバとしてアフリカで再利用されていく様、これもイメージしていなかった。 薄っぺらな自由貿易や保護主義という言葉を血の通った現実のものとして理解するとても、勉強になる本でした。
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
フェアトレードとは一線を画す,グローバリゼーションの真実,
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レビュー対象商品: あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実 (単行本)
著者がアメリカで入手したTシャツを手がかりにその生い立ち,
最後までの流通経済を追った本 単なるフェアトレードのみを扱った本とは異なり,綿Tシャツの 最初から最後までを丹念に比較優位性の観点から追っている. 綿わたがTシャツに変わるそれぞれのフェーズ,つまり 綿畑のテキサス州農家の比較優位について. 綿わたから,白地のTシャツができるまでの中国の比較優位について. Tシャツが消費されるアメリカの貿易についての考察. 最後に中古となり,完全市場となってゆく様子. を丹念に検証している. 結論にて,フェアトレードを憂いていた女子大生の言葉に対して 筆者からのメッセージは貧者を市場から守るのではなく,政治の中に 組み込んでいくこと,そして,物事の両面にしっかり目を向けなさい ということであった.これは,単にこの本を斜め読みしていると 見落とし勝ちな点であるし,レビューにも見落としていると 思われるものもある. ちょっとだけ残念なのは,日本語版では,引用文献をすべて省略 されており,ここからさらに考察を深める際にはやっぱり英語版が 必要になる.虫眼鏡で見える程度でも良いので残してくれると 英語版を買う手間が省けたと思うのが残念でした.
20 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
真に強靭なグローバリズム,
By 射手座 (大阪) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実 (単行本)
著者が勤務する大学構内で女子学生が途上国でTシャツ縫製の「搾取工場」を営む多国籍企業を糾弾するアジ演説の場面から物語は始まります.彼女の経済学的知識の乏しさをたしなめる位の気持ちでTシャツが誕生してから自分の手元に届くまでを追いかけ始めた著者は,しかし思わぬ深みへと読者ともども入り込んで行きます.
米南部の綿作が南北戦争以来,優位を保ち続けている理由.19C英国から始まり米国,日本,香港等を経由し中国に押し寄せた「底辺を目指す競争」….特に後者の「女工哀史」的現象は各々の国で在来産業からの離陸時には必須であり,また働き手(ほとんどは女性)にとっては,たとえ長時間・単純労働・低賃金であっても,農村に留まるよりは遥かに魅力的かつ自立可能な職場を提供していることは重要な観察事です.一方で「戸籍制度」など独特な法制が中国の高生産性をもたらしていることも見逃されていません. これだけなら先の女子学生の「浅はかさ」を嗤うだけになるでしょうが,著者はさらに歩みを進めます. 綿製品は原料から製造に至るほとんど全ての行程で政治が介入し続ける,経済原則だけでは説明できない商品であることを解き明かすのです.政府に補助金や輸入規制を導入させる米繊維業界など政治力の有無がモノを言う世界であるのと同時に,政治介入がもたらす予想もつかなかった結果もレポートされます.最終的に古着になった段階でTシャツは初めて政治からフリーの世界に入ります. 大陸と時代を縦横に駆け巡るスケールの大きさもさることながら,テキサスの農場主,上海の縫製工場の労働者,タンザニアの古着屋等々の市井の人々が,大言壮語せず日々の糧を求めて行う経済活動そのものが自他ともに「豊か」にしてゆく様に,グローバリズムの真の強靭さを見た気がいたします.
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