なんという物語だろう。初めて読む作家だけど、この小説は今年読んだSFの中でもベスト1に挙げてもいい。
死に直面した研究者が人工知能と向かい合い、死とは何かを見つめていくという小説は、甘いところは一切ない、硬質で無機質なもの。迫りくる自分の死への恐怖の描写が真に迫り、読んでいても、自分の末期を想像させられ、恐ろしくなった。
ここまで、死と向き合うSF小説は読んだことがなかった。SFでも、人間は将来、肉体という枠から解放され、人格転送といった形で永遠の命を得るというようなものはよくあるが、この小説は、そのアンチテーゼともいえる。
AIや人格転送といった技術が発展し、人間の脳や人格をコンピュータ上で再現できたとしても、それは肉体を持たない以上、人間にはなりえない。
救いのない結末だが、最後に「wanna be」と呼ばれる仮想人格との会話は切ない。彼女のための「あなたのための物語」は、この結末なくしては完結しなかったろう。
再読するのが、ためらわれるような衝撃を受けた作品だった。