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あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)
 
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あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA) [文庫]

長谷 敏司
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (12件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、
ITPテキストで記述される仮想人格《wanna be》に小説の執筆をさせることによって、
使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。
そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。
彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である“感覚の平板化”の解決に捧げようとする。
いっぽう《wanna be》は徐々に、彼女のための物語を語りはじめるが……。

内容(「BOOK」データベースより)

西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格“wanna be”に小説の執筆をさせることによって、使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である“感覚の平板化”の解決に捧げようとする。いっぽう“wanna be”は徐々に、彼女のための物語を語りはじめるが…。

登録情報

  • 文庫: 429ページ
  • 出版社: 早川書房 (2011/6/10)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 415031036X
  • ISBN-13: 978-4150310363
  • 発売日: 2011/6/10
  • 商品の寸法: 15.8 x 10.8 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (12件のカスタマーレビュー)
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32 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By hamachobi トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:単行本
なんという物語だろう。初めて読む作家だけど、この小説は今年読んだSFの中でもベスト1に挙げてもいい。

死に直面した研究者が人工知能と向かい合い、死とは何かを見つめていくという小説は、甘いところは一切ない、硬質で無機質なもの。迫りくる自分の死への恐怖の描写が真に迫り、読んでいても、自分の末期を想像させられ、恐ろしくなった。

ここまで、死と向き合うSF小説は読んだことがなかった。SFでも、人間は将来、肉体という枠から解放され、人格転送といった形で永遠の命を得るというようなものはよくあるが、この小説は、そのアンチテーゼともいえる。
AIや人格転送といった技術が発展し、人間の脳や人格をコンピュータ上で再現できたとしても、それは肉体を持たない以上、人間にはなりえない。

救いのない結末だが、最後に「wanna be」と呼ばれる仮想人格との会話は切ない。彼女のための「あなたのための物語」は、この結末なくしては完結しなかったろう。

再読するのが、ためらわれるような衝撃を受けた作品だった。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
死と生の物語 2010/6/18
形式:単行本
私はがっつりSFを読む人ではないので、最初はどうかなあと思いました。しかし、SF的な現象とか小道具が少なくて、そういう意味では読みやすかったです。
話はかなり衝撃的で、一人の女性の避けられない死に向かう現状とその心情を中心に、仮想人格との交流をからめて話は進行します。主人公サマンサの心情や思考を中心として語られるので、物語として動きが非常に少ないのですが、それでも引き込まれる圧倒的な“死と生”の生々しさがあります。私はこれほど、人の死に真正面から向き合った作品を知りません。
この作品がSFとしてどのような位置にあるかはわかりませんが、単に一SF作品としてではなく、もっと広く一般に読まれるべき良書であると思います。
このレビューは参考になりましたか?
19 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本|Amazonが確認した購入
社会的・経済的な大成功を収めた、傲慢で独善的で自己中心的な女性科学者・兼・起業家を突然襲う、死の病。読者はこの主人公の視点で「死」と徹底的に向き合わされます。

私は恥ずかしながら、アクションのない小説は大の苦手としています。しかし、ほぼ全編が主人公の内面描写に終始する本作を読んでいて、退屈する瞬間は1秒たりともありませんでした。読了後、しばらく天井を見つめたまま呆然としてしまったほど、物語に没入し、深く考えさせられました。

人間は、脆すぎる肉体を持ち、最終的に死によって無に帰してしまう有限の存在だからこそ、人間性が築かれる。しかし、その肉体が怪我や病気で苦痛に苛まれると、理性や尊厳を保つ余裕がなくなり、肝心の人間性が失われる。当たり前すぎる現実ですが、何という矛盾でしょうか。この矛盾に対する著者の強烈な憤りが、最後の1行に集約されているように感じました。

本書のスタンスとしては、「苦痛と死は悲惨だが、それでも(当面は)人間性の形成には不可欠である、残念ながら」と結論付けているように感じました。ここで思い出すのは、グレッグ・イーガンの短編『ボーダー・ガード』です。イーガンは『ボーダー・ガード』の中で対極にある価値観を提示しています。

「崇高で価値がある死とは、歴史上の英雄や、他者を救うための自己犠牲など、ごく一部の例外だけである。死や苦痛が人間の存在に意味を与え、人間性の向上に不可欠だという主張は、歪んだ妄言以外の何物でもない。大多数の人間にとって、死や苦痛は単に無意味であるばかりか、肝心の人間性を失わせる最大要因となっている。科学技術によって死や苦痛から解放された時、人類は初めてその潜在能力を100%引き出す機会を得る。」

本書『あなたのための物語』を読み、サマンサの苦痛と無念と死を追体験するうち、なぜかこのイーガンの思想が強く思い出されました。人間が人間たりうるために、肉体感覚は不可欠かもしれません。しかし、その肉体が脆く、やがて死んでしまうような欠陥品である必要はあるのでしょうか。

サマンサが己の人格を見つめ直すためには、苦痛と無念と死(とITP)が必要でした。「苦痛と死が魂を磨く」とは思いたくないのですが、自分の痛みを知らない人間が、他者の痛みに共感できるとも思えない・・・。人間が持つ共感能力が、自らの苦痛に立脚しているのだとすれば、やりきれません。

本書では、サマンサと≪wanna be≫がITPを介して互いに深い共感を得て、肉体を持たない≪wanna be≫が最終的に瑞々しい人格を形成するに至りました。彼が最後に遺した「私は、あなたの、お役に、立てましたか」という台詞に、この物語の唯一の救いを見た気がしています。哀しすぎますが。

★は少なくとも50個は付けたいところですが、5個しか付けられないので、5個です。
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