レビュー・タイトルを初めとする名実況でお馴染みの著者の自伝。新人時代の苦労話、騎手・調教師・厩務員等競馬関係者の裏話等を交え、あの名実況の実態に迫る迫真の書。
考えて見れば、著者は放送局の1アナ、つまりサラリーマンである。また、入社前は学生時代アナウンス研究会に所属していた経歴はあるものの、競馬とは縁が無かったらしい。それが、配属によってスポーツ・アナそれも競馬アナになったことをキッカケに競馬に情熱を燃やすようになる。通常、アナウンサーと言えば冷静に原稿を読むイメージがあるが、競馬アナの場合、どうしても聴く者を熱狂させる立場にある。このために、新人時代から修行を重ねる真摯な姿が読む者の心を打つ。自分の仕事を愛し、競馬を愛し、ファンに夢を与える。このような競馬アナを持った、日本の競馬ファンは幸せである。
個人的に疑問に思っていたことがあって、それは展開が正確には読めない筈の競馬において(先行馬、追い込み馬等の大まかな区別はあっても)、スピーディに変化する、その時々の順位、位置取り、そして"決めゼリフ"はどうやって言うのだろうかということである。まあ、馬の識別は騎手の勝負服や帽子の色で分かるとしても、一体セリフは ? どうやら、セリフは前もって準備しておくようである。勿論、実際の展開が予想と外れる場合も多いので毎回用意したセリフが使える訳ではない。そして、使える場合も、後世に残るような名セリフは"とっさに"出るそうである。きっと、競馬の神様が天啓を与えてくれるに違いない。それだけの情熱を著者は注いでいるのである。著者が競馬に賭ける情熱と夢とロマンに溢れた競馬ファン必読の書。