MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞’05年最優秀短編賞受賞の「傷痕」をはじめ、警察官である5人のヒロインたちを描いた10編を収録した短編集である。’06年「このミステリーがすごい!」海外編、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門の、共に第1位に輝いた。
タイトルはアメリカの警察官が被疑者逮捕の際に読み上げる、相手の権利、「あなたには黙秘する権利がある。あなたの発言は法廷で不利な証拠として扱われる可能性がある」からとられている。
このタイトルからも分かるように、どの作品も、自身が警察官だった著者の実体験に基づいて、彼女たちの警察官としての日常の職務が写実的かつ生理的でリアルに描かれており、すぐれたドキュメンタリーを読んでいるように生々しく読者に迫ってくる。
銃を持った被疑者を射殺した話(「完全」)、被害者の死体のすさまじい死臭が、制服から身体中に至るまでいつまでも消えない話(「味、感触、視覚、音、匂い」)、夫婦そろって警察官で、ふたりとも殉職する話(「キャサリンへの挽歌」)、若者の無残な交通事故と自分も交通事故に遭って辞職する話(「場所」)、いまは夫となった当時の刑事の捜査がずさんだったとして、当事者から6年前の事件の再調査請求を受ける話(「傷痕」)、武器を持たない相手を誤って射殺する話(「生きている死者」)、その事件の後遺症で逃げ出すヒロインの話(「わたしがいた場所」)。
これらの、あえて静かで淡々とした記述を通して、常に死と向かい合わせの過酷な世界に生きる5人のヒロインたちの、切ないまでの苦悩が伝わってくるのである。
本書は、味読に値する傑作である。