料理本にもかかわらず、カバーは、ボンベイサファイアを思わせるブルー。料理は「下萌え」「菊の酒」「薬喰い」などの季語や、「甘茶でかっぽれ」「山づと」なんていう、小粋なお題(?)ごとに紹介され、『イロハニ歳時記』などと同じく歳時記風の構成。
そしてお料理の写真は…… 期待を裏切らぬ美しさと独創性に満ち満ちている! 日本人に生まれてよかったと思わされるとともに、どこかの天才外国人シェフがサブディッシュに作ったのではないか、と思えるような突き抜けたところが、あちこちにあるのだ。
器もクロスも、花や葉のあしらいも、盛り付けとともに完璧にアートしている。それなのに、一人ぐいぐい飲みながら、または誰かとおしゃべりしながらでも、ちょちょいと作れるかな、と思わせてくれる気安さもある。
後半にまとめられたレシピには、その料理にお薦めの酒まで書いてある。実際、旬のものを使ったお手軽レシピが多いのだけれど、さすがに食材や調味料類へのこだわりはハンパではなく、「おすすめ食品」には、福井のへしこ鯖から、イタリアやフランスのからすみパウダー、銘柄指定の塩、しょうゆ、酢などのリストがずらり。
いちばんおもしろかったのは、お題は「南風」のラム酒のあて。なんとローズマリーやバニラビーンズの香りがそれなのだ。大人だなあ。で、ラム酒は割らないで、生で飲むのですね。さすが酒豪。
欲をいえば、レシピ前の「はじめに」だけでなく、もっと文章も読ませてもらいたかったが、これは目にもおなかにもとてもおいしい、アートなお料理本です。