この不況の続く日本で、打たれ強いドイツの教訓はたいへん役に立つ。感激して読んだ。
企業経営者から、就職活動を考える学生まで、胸を打たれるだろう。
他に類書を見ない。すでにドイツ滞在20年という著者 日本でもまだ、こんな緻密な職人技のジャーナリストがいるのに驚いた。文庫本だから、買いやすい。
以下に本の内容の一部をご紹介したい。
古都アウグスブルグ。世界の自動封入・封かん機業界でトップメーカーのベーヴェ社がある。一時間に6000通の文書を封入する高速システムのでは世界シェアの47%を確保する。さらに一時間に最大2万2千通の文書を封入するターボプレミアムという機種では、世界市場の9割を抑えている。なんで、そんなにたくさん封筒を作るのかと誰しも思うだろう。だが、毎日、銀行、保険会社、クレジット会社から請求書や利用明細書が郵便で送られてくるでしょう。
個人的には、あんなもの、メールで送ってくれば良いと思うのだが、そうはまだいかない。日本最大の郵便の使用者NTTグループは月に6000万通の請求、明細書を発送するそうだ。アウグスブルグで組み立てられた機械が全国15箇所のNTT文書センターで13年前から、全部同社の機械になったそうである。
封書ののりづけ部分は0.1ミリの誤差までしか許さないとか。 日本人も細部にこだわるが、それに答える、ドイツの企業も凄まじい。製造拠点はアメリカに一箇所あるがあとはアウグスブルグの工場だけだそうだ。
ごたぶんにもれず、ヨーロッパにも、人件費が安い国はいくらでもある。
ドイツ国内の工場を閉鎖して、東ヨーロッパに工場を作る企業も多いそうだ。何しろ、ルーマニアに工場を持っていけば、人件費は11分の1になる。
ポーランドで6分の1。有名なフィンランドの携帯電話メーカー、ノキアはドイツ工場を閉鎖して、ルーマニアに組み立て工場を移転した。
だが、ベーヴェ社はアウグスブルグから動かない。技術集約型の開発と生産を維持するにはドイツでなければという。私などには懐かしい、アメリカの
ベル&ハウエル社はベーヴェ社に買収されたとのことだ。駆け出しの時のフィルム・テレビカメラがこの会社のカメラ。
技術集約型もしくは知識集約型のB2B業界では、産業の空洞化は起こりにくいと著者は指摘している。ドイツの世界企業は中規模企業が多く、必ずしも、一般消費者が名前を知っている会社ではないようだ。
我が国の日本経団連に当たる、ドイツ産業連盟やドイツ経営者連盟のの会長もいずれも中企業の経営者だ。この辺は日本とだいぶ違う。
輸出産業として、ニッチマーケットで成功を収めた家族経営の企業も多いようだ。こうした企業は社名が広く知られるのを好まないようだ。特殊なマーケットで、名前を知られれば十分ということ。高い広告費は不要。