- 【 講談社ストアはこちら 】 -累計750万部を突破した大人気コミック『宇宙兄弟』や、『のだめカンタービレ』や『ホタルノヒカリ』といった名作を次々と生み出した雑誌『Kiss』の20周年特集など今注目のタイトルや特集は講談社ストアへ。
登録情報
|
まるで大河ドラマのような漫画だった。
戦乱の世、生涯をかけて仏とは、人生とは何かという自問自答を続けた
果ての彼の言葉。ラストは涙なしでは読めない。
にもかかわらず、一般にあまり名が知られていないのは、たぶん、発行部数が多い週刊誌に作品を連載する機会に恵まれなかった、という要因による。まあ、仮に機会があったとしても、あのクオリティを維持しながら週刊での連載が可能であったかどうかは、また、坂口氏の作風の根底にあるテーマ性に大向こうに受け入れられたか否かは、かなり疑問の残るところではあるが。
例えばこの「あっかんべぇ一休」の主人公、一休宗純も、まあ世間では「とんち坊主」とかのイメージが強いし、また、そういったイメージもけっして間違いではないんだけど、その実、かなり複雑な人なのである。なにせ、新年にしゃれこうべをかかげて、「正月は冥途の道への一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」と歌って練り歩いたという伝説をもつくらいで。
旧い秩序が音を立てて崩れ去る応仁の乱前後の世相を背景に、異性や権力への拘りと諦観をの間を未練がましく行き来しながら、成長し、老いていく一休宗純という男の生涯を遂一目を逸らさずみつめていく。単純に一幅の「絵」としてみるなば確かに美しくはあるのだが、ある意味、残酷なまでにクリアで透明な視線で追っていく。
そして、最期、死を目前にした一休宗純は「し、死にとうない」と盲目の愛人の森女に泣いて縋る。そこには、「名の通った高僧の悟りの境地」とは程遠い、「ナマの生」があると思う。
一休は世の禅僧のなかでも独特な位置にあり、それはなおかつ坂口尚の位置にも対応しているように思う。この本は坂口の師匠筋に当たる手塚治虫への挑戦だったのかもしれない。例えばいろんな階層の人間を描きながら常に民衆の視線まで降りていって描くというのは手塚と同じ創作態度である。しかしこの本で彼は「ドラマ」を排除した。繰り返し描かれる権力争い、戦闘での殺しあい、世阿弥の問答、自然、一休の生きざま。きちんとストーリーとして描いてはいない。これは手塚が嫌った「文体」である。しかしその印象は作者自身の死が身近に迫っているとは思えないほど、静謐、そして美しい。一休がそうであったように、坂口は坂口の道を行ったのだ。私は彼の漫画界での位置はもっと評価されてしかるべきだと思う。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|