「本当に重要な金融支援とは、競争力につながるしくみづくりを進める金融支援であるべきです」。
わかりやすく的確に、日本の銀行の現状と課題について整理してある。特に、以下の点は印象に残った。
・預金はだぶついている
・大手企業は銀行に頼らなくてもよい資金調達の手段を整備している
・中小企業には貸したいのに貸せない会社もある
・収益の柱はALM
・住宅ローンは儲かる
・リスク商品の販売も収益に貢献するが説明に時間がかかる
・ATMに代表される業務効率化以外のイノベーションが無い
・利益率が低いので外資は積極的に日本に進出してこない
・ビジネスに合わせた適正な金利設定ができていない
バブル崩壊後の銀行の再編や、リーマンショックの教訓についても書かれている。
また、貸し渋り批判は一面的で、背景には日本の中小企業の経営状況が1980年代に比べて大きく悪化しているという事情があるという。しかも、実際に融資を断っている比率は住宅ローンなどよりもずっと少ないとのことだ。
しかし、この中小企業への貸し渋り統計の説明には問題がある。同じページのグラフをよく見ると、そもそも「借入の申込をしなかった」という企業が小型企業で59.4%、中型企業でも40.8%にも上っているのに、それも母数にいれて計算しているからだ。
「借金を申し込んでいない企業」も分母に加えた上で「借金を断られた企業」の比率を出せば、そりゃあ、こうやって低く見える数字になるだろう。だが、貸し渋りに遭った企業の比率を調べようと思ったら、「お金を借りようとした」企業の中で「断られた」企業がどのくらいあるかの比率で見るべきだろう。
実際、そうやってこのグラフの値から計算し直せば、融資を断られた企業は小企業の場合で10%近くになる。条件が厳しくなった企業も加えたら3割に近い。とても「せいぜい」などという値ではない。この点において、本書の主張の根拠となっている計算方法は、公平さを欠いているように思われる。