いかなる風潮 いかなる習慣 いかなる因果にあっても結婚とは強制と自発 義務と感情 幸福と社会 対話と自己告白である
紫式部は 生みの母親を早くに亡くして継母に育てられたというが トラウマから自分を生かしめている基盤を全面否定しないのだ
源氏物語は欲望と尊厳 魔神と共感 支配と解釈 情熱と責任 聖性と苦悩 権力と魔性 執念と無念 陶酔と悲哀を
千年たっても傾城でなく いとおしい いかなる立場からも尊敬に値する 姫の感覚と克己として書ききったのだ
男女同権 誓いの不可侵よりは愛と理性の最善の方向性 素朴な疑問を紫式部は生々しい親密と虚無感
生活を維持し 高める力強い人間 自分に食い入る論点となる印象として
憧れを授かったり美徳の化身として 生まれてきた男女に体現させた
夢は他者と心や血が通い合えばいいが いかなる判断 いかなる時代 いかなる制度であっても
恋愛と結婚の乖離は起こりうる 奪ったとか壊したとか非難するよりは自分が何を守るかを教えてくれる
絵については 紫の上は 心優しく我慢強く誰に対しても最善を考える恩師に似ている
女三の宮は間が抜けてはいても 人が良い同級生に似ている
柏木の生命 精悍 涙の強引さは絶世の愛らしさとは何かを物語っている
鷹がするように さわやかに飛躍し女三の宮をつかみとる柏木
情熱よりは鷹揚に生きたい 深刻さを好まない女三の宮は昼の立場より下品にも卑劣にも見えない
大和源氏は冒険も人柄も女心も微妙にして総花的に人生を切り開く皇族 貴族たちを新しい
平安の美男美女として現前させている 愛欲にとらわれても美徳や高貴を手放さなかった女たちの
わたしたちのヴィジョンと呼ぶに相応しい 美と愛と母性と家父長の群像劇だ
大和源氏の仙資玉質は 女性の自立の限界 西洋の闇をくぐり抜けた三十女だから わかる癒しと神々しさだ
思春期 修羅場にあったわたしに あさきゆめみしは夢を見させてくれた
三十過ぎると経験 出会い 自分の生まれもった役割 内心と社会の力関係について教えてくれる
源氏物語は 外からどう見えるかに重点が置かれるので視覚化が一番合っている
確かに悲劇かも知れない しかし読後感は濃密な哀惜 亀裂を真心や得心で繁栄につなげた実り多い 尊い人生に
立ち会える 偉業をなし遂げる人々と呼吸を合わせる連帯感だ
政治も恋愛も貴公子も女らしさも相対化され 愛と知恵で輝き 弱さと誤算で考えさせる
意思と運命のあいだで 醜態や破壊の拡大再生産はせず 自分の真実が純粋で残酷な現実として詩情に絶頂になる
自分はいない方がいい人間なのか? 全員 花言葉のような素質を上品に躍動し芸術的な落ち着きがある
名目と実質の乖離 言葉と実体の乖離のなかで 到達点も共感も失敗も教えてくれる