前半に他社で発表された短編が、後半に作者自身の半生を記した「告白」漫画が収録されている。
感覚的で形而上的とも言うべき漫画群は漫画という表現からあくまでも自由で、お約束や規範に縛られない作風はそれゆえに読者を困惑させることもあるかもしれない。それでも作品の中に確かに示されるのは、他人や世界との断絶感であったり、記憶も定かでない時分にどこかで観たことのある光景へのあこがれであったりする。こうした気持ちを人は誰も持たなかったことはないのだから、じっくり読んでいけば何らかを感じ取れるのではないだろうか。
一度読んではっきりとすべてを理解する漫画ではないが、読み返すたび自身の幼少のころ感じた原体験への記憶を穏やかに、けれど力強く刺激してくれるので、抽象的な漫画を苦手とする方にも手にとって欲しく思う。
自伝的、むしろ自伝そのものと言える連作「告白」シリーズと合わせてこの本は、みずみずしさを失うことなく描き続ける漫画家・安永知澄という少女がどのように世界と向き合って、どのように付き合っていくと決めたに至ったかを「やさしい」筆致と「からだ」への情感をたっぷりとこめつつ描いた魂の記録である。