時は昭和の終焉を告げる頃。激しく吹き荒れていた校内暴力の風が、ようやく緩やかに凪ぎへと向かう――そう、見た目分かり易い“不良ども”が姿を消し去る最後のジェネレーション。
しかし、この物語はただノスタルジックに時を懐かしんだ不良番長の物語に留まってはいない。
作者の生々しい経験がそのまま盛り込まれ、時代の趨勢が克明に描出されている。
暴れん坊のサルに翻弄されるシン。二人を取巻く世界には映画や音楽に留まらず、民族やらイデオロギーやら宗教やら原爆やら。そこには人間たちがヒトとして生きて行く最中に、否応無しに付きまとってくる恨みだったり救済だったり哀しみだったり懊悩だったりがしっかり横たわっているのだ。
また、決して観光ガイドに載ることの無い長崎の町々の裏通りの精細な描写。そこで生きる80年代の少年たちが、冷めたり熱くなったりして命を燃焼させている様が痛々しく伝わってくる。
殴られれば痛い。人を殴っても拳が痛む。
骨が軋みヒビが入り、皮膚は裂け血管は千切れ紫色に腫れ上がり、筋肉と神経は悲鳴を上げる。
パンチを繰り出せば相手の唇がプチプチっと切れて血滴りが飛び散る。そういう感触を体感することができる。
そんな感じで始終痛みを伴う筆致の中、少年たちが必死に――時にはゆるやかに、生きる姿が鮮やかに見えてくる。
作者の分身とも言うべき主人公の“シン”。
小学生の時、やむを得ずついた嘘からいじめられっ子としての孤独な闘いを描いた「
半ズボン戦争(幻冬舎)」のシン。
映画学校の卒業制作で、自分と母親を捨てた父親を探してゆく姿をドキュメンタリー映画にしようとする「
蒸発父さん―詐欺師のオヤジをさがしています (バジリコ/幻冬舎文庫)」の青年期のシン。
同じ作者の作品なれど、これらがまったく同列の繋がりを持つキャラクターなのかどうか断じることは出来ないが――今回のシンは更に波乱万丈にて弾けたアクションを起してくれる。
親友となる“サル”との出会いから、意図ぜずして暴力の嵐に巻き込まれることになる中学生のシン。だがそれは、常に若さゆえ……イノセントな色彩に塗り込められているからこそ、より際立って感じる血潮の紅ではないのか。
そして、最後の番長・サル=猿渡タミヲ。まさに「サルバトーレ・タミヲの受難」の物語であるが、この愛すべき暴れん坊を決して忘れることは出来ない。それほど鮮烈で懐かしい“男”の匂いは馨しいものである。
だから「バイオレンス」とタイトルに表記したものの、これは暴力小説では決してないのだ。這い上がろうとする少年たちの記念符と言えるだろう。
おう、シンたちの高校生編が楽しみだなあ。
ちなみにカバーイラストは、あの「宮本から君へ」「愛しのアイリーン」「ザ・ワールド・イズ・マイン」そして「キーチ!!」を描いている新井英樹。
うーむ。新井先生の画で漫画化された「あくたれ!」も見てみたい気がするぞっ!