今では忘れさられた大正初期の作家田村俊子の短編集です。
収録作品は「あきらめ」「女作家」「誓言」「木乃伊の口紅」「春の暁」「栄華」。
俊子の書く女性はどの作品を読んでも頭にはっきりとしたディティールで浮んでくる。
そして描かれる女性は母でもなく妻でもなく「女」なのである。
この女性像は俊子自身終生独身(戸籍上では)で
「一つの場所にとどまって生きていた女ではない」からだろうか?
彼女にかかわった夫と呼べる男が二人いるのだが
二人とも彼女の生き方を最終的に定めた存在には思えない。
最終的には彼女が捨て、彼女を捨てた男だから。
状況に流されっぱなしだが「どうとでもなれ」といった女性像は
彼女の生き方と同じものかもしれない。
「あきらめ」は女性版「三四郎」(夏目漱石作)といった内容で
もっともっと世間に知ってもらいたい一作。
是非再版して欲しい。