エンジンが故障し船は漂流、程なく携帯電話に「圏外」の表示が出る。それは同時に、彼が人間世界の「外」に出で、自己の「内的世界」へと出発したことをも意味していた。
水、次いで食料が底を尽いても武智は焦らず腐らず、「できることは、とりあえずやる」という鉄則を貫く。体力も衰えるなかで、キーホルダーで作ったルアーで魚を釣り、海水をやかんで蒸留して水滴をなめ、果ては小便まで飲む。これ以上ないほど深刻な状況なのだが、彼の言葉には突き抜けた明るさがある。
「…小便をちょっと。舐めているだけなのに。まだ死なない。人間って、案外死なないもんだ。いやまったく。今日も元気だ、小便が旨い。いや、旨くないか。元気でもない。ちっとも、元気なんかじゃない。でも生きてる。生きてる。俺はまだ生きているんだぞ…」。たとえるならば「無人島マンガ」のようなユーモア。それは孤独と欠乏とを基調にしながらも、人間存在への素朴で深い思索を喚起する。
「…あきらめが早いって? だけど俺はあきらめたから生きられたんだ。…」諦めることは明らめることでもある。ネガティブも極まると、ポジティブに反転する。
諦念と諧謔(かいぎゃく)、そして常ならぬ平常心。静かな勇気・矜持(きょうじ)を持って生きることの、また大らかな諦観の持つ「壮大な力」を見せつけられる。(濱 籟太)
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5つ星のうち 5.0
不思議な勇気が湧きました。,
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レビュー対象商品: あきらめたから、生きられた―太平洋37日間漂流船長はなぜ生還できたのか (BE‐PAL Books) (単行本)
不思議な本です。いままでこういうことを言った人がいるでしょうか。 あきらめたから、生きられただなんて。 でも実際に武智さんは、あきらめたから37日間という 信じられないような長い期間を 生き抜くことができたのです。 がんばらなくていいんだよ、とりあえず自分にできることを、 出来る範囲でやっておこうよ。 無理だったら休んでいいんだからという武智さんのメッセージに
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
執着心が無いという事,
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レビュー対象商品: あきらめたから、生きられた―太平洋37日間漂流船長はなぜ生還できたのか (BE‐PAL Books) (単行本)
私は今まで色々とノンフィクション漂流記なるものを読んできたが、多くの主人公が生きることに対して欲望が強く、そのために日数が経過する毎になすすべがなくなり、絶望的になるケースが多い。しかしこの著者は漂流しても、死んでも仕方ないとかこれだけやったのだから後はなるようになる的な発想が終始しており日数が経過してもそうであった。なぜこれほどまでに、生に対して執着心や死への恐怖心が無いのかと不思議に思った。それだからこそ37日間も生き延びられたのだろうが。他の漂流記を例にとれば漂流いかだで迷っていたとき上空の偵察機が近くに飛んだにもかかわらず素通りしてしまって翌日立て続けに何人も亡くなったというケースもあった。体力も重要だろうがやはり絶望感を感じると人間は生きていけなくなるのかもしれない。それを考えるとある意味楽天的だった著者がこれだけ生き延びられたのは当然とも言いかえられるのかもしれない。 一方で著者は日本近海をさ迷っている時、楽天的思考が引き金であったであろう数々のミスを犯して漂流したことに気付く、結局のところ生き延びた最大の原因は楽天主義であったが、漂流のきっかけを作ったのも楽天主義であった。不思議なもので諸刃の剣のような展開だったのかと思う。
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5つ星のうち 5.0
おもしろかった,
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レビュー対象商品: あきらめたから、生きられた―太平洋37日間漂流船長はなぜ生還できたのか (BE‐PAL Books) (単行本)
著者の独特の忍耐強さが印象的です。なかなかこんな人いないと思います。まずこんな人がいるんだという新鮮な驚きが楽しめます。漂流サバイバルものの大変面白い一冊だと思います。この自己主張の少ない自然な感じの忍耐力はなんなのでしょう。それがなんなのか良く分かりませんが読む価値のある本だと思います。人を落ち着かせるようなパワーがあるというか・・・大変な状況にある人はなぐさめられるし、じたばたしないで自然体になることを少し学べるというか・・
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