「私たちはきょうだけの夫婦なんです」
ごく最初の方に出てきて、その後一度も触れられないこのひとことがなければ
ほとんど印象に残らなかったかもしれない作品です。この台詞だけがいつまでも
気になって想像をたくましくさせます。
携帯電話が出てきますから、現代が舞台のようですが30年前、いや40年前だと
いわれてもなんの違和感もない設定と筋書きです。東京に行きたい人物と東京から
来た人物、そして地元にとらわれて生きる人物のからみというステレオタイプがますます
よくいえば普遍的、悪くいえばなんの新しさもない、むしろ地方在住の人間から見れば
昭和30年代からすでに辟易としていた新味のない価値観で、いらっときます。
ただ、読んでいてつまらないかというとそんなこともありません。片田舎の観光地に
嫁いできた都会でなければ生きていけない女性とその浮気によって父と3人姉妹が
残されて実際以上に思わせぶりに暮らしているものの、結局物語冒頭で提示された以上の
展開はなく、なし崩しに収束するというお話です。語られていないところに秘密が
ひそんでいるというところもうまくひっぱって実は・・・という真実が語られるのも
期待通りです。そこそこうまくできたテレビドラマの脚本、みたいな感じかな。