この本の存在は,荻原規子さんの公式ブログで知った.早速買った所,監修者と言うえらい人が選んだ作品だけを訳した物で,Lang の本の全訳ではないことを知らされ,大いに失望.Grimm の童話がドイツロマン派の,つまりナショナリズムの産物であるのに対し,これは Queen Victoria の帝国主義イギリスの偽善的道徳観に基いて作られた物で,雰囲気がまるで違うので,Grimm から採ったものも削除する理由がないのだ.Grimm にはあった人間の肉体性が髪の毛の描写に到るまで徹底的に隠蔽されていることは見事な程である.是非比較したかった.訳の文体は 'です'体でなく 'だ' 体で(会話は別), 硬い.'臣民'という死語が平気で使われるが,これはこの言葉の持つ蔑称性を知らないためだろう.読んでいて遣り切れない思いがする.監修者の責任は重い.何とか 2000 円以下に収めたかったための省略,硬い文体はマイナスでしかない.惜しいことをしてくれたと恨む.但しそれぞれの話は勿論大変に面白い.