1「とことわのうた」で竹善氏が提供したのは、彼女の高い出力と安定した発声だからこそ成立せしめるような、ブレスなしに大きく長く歌わせる難易度の高い曲です。そして彼女が見事にその音世界を表出させているんですね。竹善テイストなミディアムロックの風を満帆に受け、鳴り渡る歌声は広く地平線まで届きそうです。
私のお薦めは3「あの花のように」。08年アンコール再放送までし、高畠導宏氏の生涯を描いたNHKドラマ「フルスイング」(高橋克実主演)のエンドを飾った曲です。反響を呼んだ番組主題の爽やかな感動や、桜道を風が吹くラストシーンと重なるように、彼女の新しい名曲となりました。ライナーで彼女は、素の夏川りみが出せる曲と述べています。その通り歌声の中に自然体な優しさが表れており、包み込むように素朴な明るみで照らされた曲なんです。桜色が旋律になったような。綺麗ですよ。
1のような出力の高さだけでなく、その出力の中にも温もりや更に豊さまで織り込める懐の深さはシーンでも稀有の才能ですよね。それは後で出てくる二つの最高峰の名曲9「童神〜ヤマトグチ〜」と14「愛よ愛よ」において、如実に感じ取れるかと思います。
素朴な6「空のように 海のように」では、思わず沖縄の空と海を思い浮かべてしまうと彼女はいいますが、その素直なイメージが自然に届いてしまうのは、歌声の透明さと飾らないことばによるからかと思います。さすが松井五郎の仕事です。
一方童謡のように美しい風景と旋律をみせる7「月の虹」も絶品ですよ。歌声も曲想もとにかく透き通っています。夜の空気と静かに差し込む月明かりがみえる音なのです。
他方8「さようなら ありがとう〜天の風〜」はコブクロ小渕氏が「忘れてはいけないもの」と対となる曲として彼女に託したもの。良心的なことばとサビで泣き所を決めてくる作風はさすが。そして母からの視線を歌えるのは、豊かさを内包する彼女の歌声でこそだなという気がします。
9「童神」、ネーネーズのカバー10「黄金の花」以降はもはやただただ素晴らしい音楽たちに体を委ねるのみで、全く隙のない濃密なベストです。