2ndアルバム発表後もライブ活動を続けるグループは英国ジャズの重要バンド、キース・ティペット・グループからエルトン・ディーンを含む複数の管楽器奏者を加えて精力的に公演をこなしていく。その合間を縫ってレコーディングされたのがこのアルバム。1、2作目のサイケでダダ的なポップから、本格的なジャズ演奏へと向き合っていった時期のアナログ2枚組みの大作であり、2ndと並んでグループの最高傑作に挙げられることも多い。M1、ホッパー作の「FACELIFT」は当時としては珍しい、別々の場所で録音されたライブ音源を編集したものである。オルガンがぽつり、ぽつりとアブストラクトなフレーズを刻み、突如軋みを上げ始めるオープニングの鮮烈さは何度聴いても色あせることがない。次第に湧き上がってくるブラスの混沌、各パートが多面的/重層的に広がっていく構成である。ラトリッジによるM2のメドレーも浮遊感に溢れていて素晴らしい。ダブ的な空間を作り出すファズ・ベースとミニマルなフレーズを刻むエレピが作り出す音像はまるでテリー・ライリーだ。
全体的に硬派なインスト中心だが、ワイアットのヴォーカルをフィーチャーしたM3「MOON IN JUNE」だけは唯一1、2作目らしい雰囲気が感じられ、アルバム全体の多様性を高めている。純粋なジャズロックとしてはこの後の2作の方がより洗練されているが、本作を特別なものにしているのは60~70年代の音楽開拓時代のマグマのようなエネルギーが凝縮されているところにあると思う。ロック、ジャズ、現代音楽の間のきわどい領域を切り開いていこうとする姿を実にリアルに写し出しているのだ。
そしてジャズ的な即興の妙技というより、緻密な構成や感覚的な心地よさに焦点を置いた本作は、むしろクラブ系リスナーにこそ聴いてもらいたい。ベースとエレピのミニマルな音形に例えば昨今のクラブジャズ~フューチャー・ジャズ的な感覚を見出すのもそれほど難くないだろう。実験的とか、フュージョンとか、プログレッシヴであるとかいうのは本当はこういうものではないだろうか。 ジャンルの垣根を超えた、コンテンポラリー音楽の一大傑作である。