「フィルムメイカー」としてのC・イーストウッドの円熟ぶりを見せつける力作。
とは言うもののその雰囲気は決して重いものではありません。
むしろ近年のイーストウッド作品中では一番ユーモアを感じさせる場面も多く「ブロンコ・ビリー」や「ダーティ・ファイター」などの味わいをほうふつとさせてファンとしては嬉しくなってしまいます。
物語のペースやさりげない描写にはちゃんと作り手側の伝えたいことが過不足なく捉えられていて実に「映画らしい」作品になっております。
冒頭あたりでウォルトが神父に対して「生と死について」自身の朝鮮戦争での経験を引き合いに辛辣な言葉をかけるシーン
向かい合う二人の間には風に揺れる星条旗が映しこまれていて嫌でもアメリカという国のありようと主人公ウォルトの苦悩が伝わってきます。
ご近所のタオとスーの姉弟との交流も通り一遍ではなく、物語を説得力のあるものにしています。
それにしても主人公がラストに取った行動はこれまでのC・イーストウッド作品を考えると一見矛盾するようにも思えるのだが、実際には全くそうは感じさせない。
物語の運び、主人公の心の機微を的確にとらえた描写など、派手さは微塵も感じられない「地味」な作品ではあります。
しかし、実に「映画らしい」作品でもあります。
しかしテロを経験し孤立と苦悩を深めてきたアメリカが直面する時代の空気を如実に反映しているのも伝わってまいります。
その意味でC・イーストウッド、「老いてなお嗅覚鋭し」といったところでしょうか。
必見