『バンド・オブ・ブラザース』が第二次世界大戦の欧州戦線をアメリカ陸軍空挺師団の一中隊の戦いと人間的絆を中心に描いたのに対して、この作品は、同じプロデューサー達が太平洋戦線をアメリカ海兵隊の三人の兵士の視点から描いています。いずれも最前線を体験したアメリカ兵士の実話をベースにした(全10話程度のミニシリーズ)ドラマですが、『バンド・オブ・ブラザース』が(同名の)一つの原作本をもとにしているのに対して、こちらは二人の海兵隊員による(複数の)原作本と一人の有名な(勲章を授与された)海兵隊員のエピソードをベースにしています。ガダルカナルから始まるアメリカ海兵隊による反攻、オーストラリア(メルボルン)での天国のような休息、グロスター岬で降り続く熱帯雨、戦場での友人との再会と別れ、ペリリュー島・硫黄島・沖縄と続く地獄のような激烈な戦い、終戦・帰国の後も続く悪夢や葛藤、職場への復帰や友人・恋人との再会等、アメリカ海兵隊員が体験した太平洋戦争の現実を、アメリカ側の視点でドラマ化しています。ドラマですから原作にはない脚色もあるようですが、いたずらに戦争を美化することもなく、最前戦の過酷な現実が淡々と描かれています。ドラマの冒頭に、歴史的背景の説明や、実際の登場人物のモデルとなったと思われる人たち(やその家族)が登場して証言する映像があり、あの戦争は何だったのか(どんなものだったか)を伝えようとする製作者の姿勢が伝わってきます。熱帯の過酷な自然環境、ジャングル、炎天下、降り続く雨、(アメリカにとって)異質な敵(ジャップ)との戦い、銃弾や砲弾・手榴弾で倒され手足を吹き飛ばされる敵味方の兵士たち、ウジ虫と悪臭、飲料水不足による渇き、敵兵に対する怒りと憎悪、味方を失うことの悲しみと失望、肉体だけでない精神的な破壊、敵の死体への損壊行為、戦利品漁りなどなど。このドラマを見た後で、主要な登場人物の一人であるユージン・B・スレッジ氏の『ペリリュー・沖縄戦記』(原作本のうち、唯一翻訳されている)を読みましたが、戦争の最前線を経験した者だけが書ける第一級の回想録だと思いました。ペリリュー島の戦いという、日本人の間でもこれまであまり有名でなかった南太平洋での激戦に新たにアメリカ側の視点でスポットを当てたこのドラマは、日本人にとっても太平洋戦争とは何だったか(どんなものだったか)を思い起こす(忘れない)ための、興味深い視点を提供していると思います。