2012年5月の開業まではまだ半年以上もあるのに、スカイツリーのガイドブックは何百種類が出たのだろう。
本書は、スカイツリーという建造物そのものを、建築工学や構造力学など、ある種お堅い学問的な興味や視点で捉えた、異色の一書だ。
だから、いわゆる観光ガイドのような、食事処や名所旧跡の紹介はほぼゼロ。
その代わり、スカイツリーが21世紀の現在だからこその最先端技術を惜しまず駆使して建造された事実や経過を、当初の設計思想にまで遡り、詳細に解説している。
読者諸賢は、こんな疑問を抱かないだろうか。
634メートルの“超々”高層建造物が、下町のゼロメートル地帯という軟弱な地盤の上に、東京タワーのように大きく足を開いて踏ん張るでもない、ほぼ直立の状態で、なぜ建造できたか。
折しも東日本大震災が発生したが、都心直下型巨大地震にも耐え得る強度や耐震免震の構造を、いかに確保したか。そして、いざ震災発生時には、如何にその被害を最小限に留めるべく工夫を凝らしたか。
建築には素人でも、ツリーに結集された技術の数々は非常に興味深い。国産技術の高水準には感動さえ覚える。
未知の高さゆえ、世界で初めて採用された工法や技法も数多い。それらについても、決して難しくない表現で解説されている。商業施設として開業後は絶対に立ち入れなくなる場所も、今のうちにと詳しく紹介している。
工事現場では、将来の同様工事の参考にするためにも、しっかり写真で現場の記録を残すが、本来なら工事関係者だけしか目にできないようなその種の写真が多く掲載されているので、さらに興味が増してくる。
サービスの意味合いもあるのか、『
東京スカイツリー―下町新名所 見る・撮る・食べる』でも大活躍された“定点観測実行委員会”の方が撮影された“成長記録”や“撮影名所紹介”の写真もタップリ収載。
ミーハー気分を極力排した硬派で知的なガイドとして、不思議な魅力と重厚な存在感とを醸している。