ファイナル・カットっていうけど、ディレクターズ・カットとそんなに変わってないんじゃないの?
そういう貴方はおそらく正しいし、また間違ってもいる。というのは、この真の「最終版」はディレクターズ・カットとあらすじ的にはさほどの差異はないものの、さまざまなシーンに(地味ではあるが重要な)修正や編集作業が数多く成されているからだ。
ブレードランナーは入念に練られた世界観を醸し出している作品ではあるが、ご存知のように撮影や編集上に生じた粗などはむしろ比較的多かった。台詞の音とリップがシンクしていない、スピナーを吊ったワイアーが見える、デッカードがレオンに殴られるまえに傷がもうある、などなど、、これらの撮影上生じてしまい、編集上見過ごされてしまったミスや矛盾の数々が、(映り込んだスタッフの姿からガラスに飛び込むゾラ役のスタントウーマンの姿、鳩の飛び立つL.A.の空にいたるまで)ファイナル・カットでは巧妙にデジタル修正され、また再編集されている。
メイキング本やファンサイトで散々細かく分析されてきたこの映画ならではの手の込みようとも言えるが、なんとデッカードのリップシンクの修正のためにスケジュールの合わなかったハリソン・フォードに変わって彼の息子のベンが起用され、まったく同じコスチュームで撮影し、口元を合成したというのだからその徹底ぶりには驚かされる。
また、今回ワーナーとの完璧なタッグを得た監督は、倉庫に眠っていた膨大な素材の使用により究極とも言える映画のグレードアップをはかっている。それは冒頭の「眼」のカットからして既に違っているのだ。(虹彩が火柱に反応している!)このような微妙な改訂の数々はハイ・レゾ時代に突入した現代においてこそ成されるにふさわしいものであったかもしれない。
出色のシーンとしては少し長い「ユニコーン」のシーン、「ホッケーガール」の挿入、などなど、、傷やホコリが取り除かれた画像は超高精細映像処理が施されている。音声も既出ヴァージョンを遥かに凌駕する迫力だ。
正にファイナル・カットと呼ぶにふさわしい作品であるが、その完成は長年に渡って支持してきたファンやスタッフの愛情の賜物と言えるだろう。