2000年6月3日、テレビ朝日系土曜ワイド劇場に登場したひとりの男。常にスーツとサスペンダー、胸にはポケットチーフの英国紳士然とした衣装を身にまとい、紅茶をこよなく愛し、頭脳明晰であるがキレすぎるがゆえに警察組織から『特命係』と名ばかりの閑職へと配属されるも常に事件解明に活躍する異色の刑事・杉下右京!
本書は、今や国民的ドラマに成長した『
相棒』シリーズの主人公・杉下右京の10年間の軌跡をまとめたメモリアルブックである。
長年、杉下右京を演じる水谷豊氏のインタビューにおいて開始当初は、まだ現在のように杉下右京のキャラクターが定まっておらず、当初はまず、他人に嫌われる属性を持ったキャラクターとして脚本家の輿水氏が設定した人物像にそれを演じる水谷氏が手探りの状態からアレンジして徐々に現在の杉下右京へと確立してきた事がよくわかった(杉下右京の口癖でもある“はいィ〜”や今や『相棒』の基本的スタイルとなる長回し撮影の挿話も興味深い)。
また、『相棒』シリーズの生みの親であり、現在もシリーズの根幹を支えるゼネラルプロデューサー・松本基弘、監督・和泉聖治、脚本家・輿水泰弘、三氏によるドラマ誕生から現在に至るまでの10年の足跡を振り返る座談会は面白く、企画段階のタイトルが“相棒”ではなく“黄金刑事”であった事や“杉下右京”の名前の由来が名作ホームドラマ『
パパと呼ばないで』〈1972〜73〉で主演の石立鉄男の役名が“安武右京”であり、ドラマの中で「右京さん」と呼ばれていた響きが良かった事から命名した(輿水・談)挿話は興味深い。
他にも物語の根幹を担う重要挿話の舞台裏や製作秘話の事細かな内容の豊富さや密度の濃さに大いに堪能した。
最後に三氏の座談会のなかで当初から『相棒』シリーズを牽引してきた功労者である脚本家の一人・砂本量氏(2005・12・21逝去、享年47歳)の話題は印象的でした。現在では『相棒』の準レギュラーとして活躍する陣川公平(演:原田龍二)の生みの親であり(
season3『第3の男』)、遺作となった『相棒』史上に残るサイコ的傑作(
season4『密やかな連続殺人』『悪魔の囁き』)、個人的にはお気に入りの衝撃的なラストが印象に残る(
season2『殺してくれとアイツは言った』)など未見の方はぜひ見てほしい。
追伸…他のレビューの記載にもありますが付録がちょっと…。