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『坊っちゃん』の時代 (第2部) (双葉文庫)
 
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『坊っちゃん』の時代 (第2部) (双葉文庫) [文庫]

谷口 ジロー;関川 夏央
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

それは鴎外 森林太郎の青春であった。いや近代日本の青春そのものであった。明治二十一年九月、鴎外を追い掛けて単身横浜港に降り立った舞姫エリス──家と個人、国家と愛、日本と西欧のはざまで、鴎外の苦悩は遙か歴史を貫き、現代を照射する。第二回手塚治虫文化賞を受賞した傑作、待望の第二部。

登録情報

  • 文庫: 300ページ
  • 出版社: 双葉社 (2002/11/12)
  • ISBN-10: 4575712302
  • ISBN-13: 978-4575712308
  • 発売日: 2002/11/12
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 10年以上も前に単行本を買い、時折読み返していましたが、引っ越しの際に無くしてしまったので、今回文庫版で出ているのをみつけ、買い直しました。第5部まで出ていますが、再読に耐え得るシリーズです。カバーイラストは単行本のときの方が雰囲気あると思いますが、デザイナーは単行本と同じ日下潤一で、きれいです。

 小説「舞姫」のモデル、森鴎外とエリスとの恋物語。女郎に身を落とした女性を救い出すためのヤクザとの乱闘シーンなども描かれ、活劇的でもあります。

 以前読んだときは、変革しようとする日本の中で悩む漱石を描いた第1部の方が奥が深い、と思っていましたが、今回読み直すと、鴎外も国や家と自我との間で深く苦悩していたことが伝わってきました。「これから煉獄の夢を生きるというのですね」、「恋愛を自分に禁じました」ー二葉亭四迷、漱石とやりとりする鴎外の顔の寂しく、ストイックなこと。人のこんな表情をかけるのは、関川夏央・谷口ジローコンビならでは。

 舞台は明治、このマンガが書かれたのも10年以上前ですが、今読み返しても違和感は感じません。関川夏央が第1部で書いていたように、構造改革が叫ばれている現在も、我々のメンタリティは、明治時代からあまり変わっていないのかもしれません。

 恋物語だからこそ、第1部より少し軽い感じに感じていたのかもしれませんが、恋愛ものとしても、一級品です。雨中のエリスの横顔をみつめながら、ツルゲエネフの詩を想起する四迷。「私の気に入つたのは実に此娘の心である」ー片思いしているときに読むと、胸に沁みます。 
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By TaroTaro トップ500レビュアー
形式:文庫
(第1部のレビューから続く)

第1部のあとがきには、1作目が好評だったこととコンビの創作意欲の高まりから第2部以降も製作することになったとある。第1部で「坊ちゃん」という近代化途上の日本における敗者を描いたこのコンビが、第2部で表面的には近代化における勝者といえる「森鴎外」を選んだのは必然だったのだろう。

しかし、サブタイトルにあるとおり、この第2部で描かれているのは「舞姫」である。和魂洋才を体現する鴎外が、ドイツ人であるエリスと、「家」が個人に優先する日本の伝統の間で悩み揺れる姿が描かれている。

あとがきで関川は「近代以降…日本に恩恵を与え、同時に悩み苦しませてきたのは西欧文明であり、西欧文明とのつきあいのきしみである。…鴎外は、西欧とのつきあいにおいて近代日本の先達である」と記し、「洋才を内に秘めながら日本人とはなにか、日本文化とはなにか、という問いに呻吟しつづけた先師である」と続けている。私は森鴎外のことを詳しく知らないのだが、頷ける文章である。

この第2部でのもう一人の主人公はエリスである。日本にやってきた彼女は鴎外に会うことが出来ないのだが、その代わりに実に多くの人物に出会う。実際、この2部が彼女を中心に展開しているといっていい程である。当然創作なのだが、非常に生き生きと描かれている。しかし、日本での滞在を通じて日本文化を理解した彼女と鴎外と別れのシーンは、やはりこの作品のクライマックスであろう。このシーンの二人のセリフのために、この作品が描かれたのではないかという気がしてならない。

(第3部のレビューへ続く)
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 椅子人間 殿堂入りレビュアー トップ50レビュアー
形式:文庫
日本の文学や歴史に深い造詣と愛情のある人たちが、奔放な想像力を働かせて紡ぎあげた、もう一つの歴史絵巻だ。娯楽性も高く、歴史に詳しくない自分でものめり込む面白さがあった。

自分は谷口マンガは初体験だったのですが、シャープな描線、トーンワークを駆使した陰影、偏執的なまでの描き込みなど、画力の高さに驚愕しました。あまり動きのあるタイプではないですが、ここまで端正で正確な絵を描ける人は、漫画界広しといえど片手に余ると思います。

この第2部「飽きの舞姫」は特に気に入ってます。燃えるような情熱を内に秘め、機知と勇気に富んだ異国の少女エリス・バイゲルトが美しすぎる。「エリスへの愛」と「国家への忠誠」との間で苦悩する鴎外。また二葉亭四迷も、彼女に密かな好意を寄せている。果たした鴎外の下す決断は…

みなさん御存じの通り、結局この愛は成就することはありえない。鴎外とエリスの最後の会話シーンは淡々としながらもそれぞれの思いが激しく交錯し、本当に印象深い。また鴎外の異国での激論シーンにしても、言葉の選び方といい会話の深みといい、これはもう漫画による文学作品ですね。

紡績女工から女郎に身を落とした女性と、彼女に惚れた侠客との挿話も秀逸。幼き日たった一度言葉を交わしただけの女性を、命懸けで守り抜こうとする男の姿には涙を禁じえない。きっとこういうのを、本当の純愛というのだろう。エリスと鴎外とは対照的な、しがらみも何もない愛の形が並行して描かれるんですよね。
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