10年以上も前に単行本を買い、時折読み返していましたが、引っ越しの際に無くしてしまったので、今回文庫版で出ているのをみつけ、買い直しました。第5部まで出ていますが、再読に耐え得るシリーズです。カバーイラストは単行本のときの方が雰囲気あると思いますが、デザイナーは単行本と同じ日下潤一で、きれいです。
小説「舞姫」のモデル、森鴎外とエリスとの恋物語。女郎に身を落とした女性を救い出すためのヤクザとの乱闘シーンなども描かれ、活劇的でもあります。
以前読んだときは、変革しようとする日本の中で悩む漱石を描いた第1部の方が奥が深い、と思っていましたが、今回読み直すと、鴎外も国や家と自我との間で深く苦悩していたことが伝わってきました。「これから煉獄の夢を生きるというのですね」、「恋愛を自分に禁じました」ー二葉亭四迷、漱石とやりとりする鴎外の顔の寂しく、ストイックなこと。人のこんな表情をかけるのは、関川夏央・谷口ジローコンビならでは。
舞台は明治、このマンガが書かれたのも10年以上前ですが、今読み返しても違和感は感じません。関川夏央が第1部で書いていたように、構造改革が叫ばれている現在も、我々のメンタリティは、明治時代からあまり変わっていないのかもしれません。
恋物語だからこそ、第1部より少し軽い感じに感じていたのかもしれませんが、恋愛ものとしても、一級品です。雨中のエリスの横顔をみつめながら、ツルゲエネフの詩を想起する四迷。「私の気に入つたのは実に此娘の心である」ー片思いしているときに読むと、胸に沁みます。