英国の風刺週刊誌"Punch"については、その存在自体はそこそこ知っていた積りであったが、1841年創刊のこの雑誌が1992年に廃刊に追い込まれていたという事実は知らなかった。じつに、150年以上の長きにわたって,読まれていたのだ。
本書は、この雑誌の創刊から30年間の歴史的事実と背景をもとにした肝心の風刺漫画そのもの、さらに編集人脈の個性等々を選りすぐって掲載してある岩波文庫のお待ちかね重版の一冊である。
本文庫の冒頭辺りに初代編集長マーク・レモンの肖像写真が載っているが、マルクスそっくりである。マルクスといっても兄弟のほうではなく、あのいわゆるエンゲルスと仲良しのカール君のほう、一度ごらんあれ。
この30年間というのは、雑誌にとっても題材となっている19世紀半ばのロンドンにとってもなかなかに大変な時期であった。この文庫を読んでいてもよくわかる。途方もない貧富の差、汚染のテムズ川、鉄道ブーム、ブルーマー旋風、アメリカ流の女性解放の風、クリノリン・スタイル等々、これらが特徴ある漫画でカリカチュアライズされている。
本書では漫画のみならず、キャプションに使われている古臭い英語表現を眺めるのも面白いが、創刊後、30年くらいのものしか掲載されていない。21世紀の"Punch"はちゃんとホーム・ページに残っているので、こちらと見比べるのもなかなかに面白い。いい時代になったもんだ。