『ダンマパダ』の詩は、やはり、釈尊による因縁話を読むことによって初めて理解できる事柄が多い。
因縁話と詩を併載した完全版としては、唯一の『ダンマパダ』(ウ・ヴィッジャーナンダ大長老監修、北嶋泰観訳注)があるが、大版な上に、余りにも高価であった。
これに比べて、持ち運び可能で、半額程度の本書によって、やっと釈尊の法話が身近になった。
「第1 一対の章」で因縁話から貴重な内容を一部紹介する。
最初は、釈尊が指導された僧団には阿羅漢の長老と凡夫の長老がいたこと。例えば、失明した阿羅漢のチャックパーラ長老が経行中に気づかずに虫を踏み殺しても罪にならない話。また、釈尊の従兄弟で年老いて出家したティッサ長老が慢心を起こし、釈尊は彼に非があることを告げ、相手に謝るように言われた話。
次は、神通は凡夫でも体得できるので仏法の体得とは無縁であること。例えば、釈迦族の六人が出家し、五人は預流果や阿羅漢になったが、デーヴァダッタだけは凡夫の神通を得るにとどまった話。
さらに、修行で最も大切なことは、預流道であること。例えば、学問比丘が地獄に堕ちないように、釈尊が学問比丘と修行比丘に質問し、学問比丘は初禅から非想非非想処にいたる八等至を知っていても預流道を知らず、修行比丘は預流道を知っていたという話。
このように、ダンマパダは詩を読めば、因縁話を思い出すことで修行の指針となるのである。