母をたずめて三千里の原作というのは聞いたことがあったが、クオーレがイタリア児童の
教科書の副読本であった事にも驚いた。だが何よりも近代イタリアを築く為のプロパガンダ本
であり、国家意識を高める為の本というのは本書を読んで驚いた次第である。
どちらかと言えば児童文学としての名作であるのに、イタリア国家の国家意識を高める本とし
てクオーレの持つ影の部分と、当時のイタリアが識字率の低下にどのように戦ったのかという
光の部分。そして、イタリア・ファシズムに於いてもクオーレがファシズム教育に貢献したと
言う事で、クオーレという児童文学の歴史に近代の二面を見せられた。
私自身はクオーレの文学性に罪はないと思うのであるが、作中にユダヤ人の方がクオーレに
ついて憎悪し、断罪する部分がある。ファシズムによって弾圧された人々にとって、国家主義
を煽った教科書が「クオーレ」である限り、その言葉もまた忘れるべからざる事実であろう。