ルイス・キャロルゆかりの鏡の捜索を依頼され、北陸の
孤島にある『アリス・ミラー城』にやって来た8人の探偵。
やがて凄惨な連続殺人劇の幕が上がり、不可能状況のもと、探偵が一人、また
一人と殺され、そのたびに、館内のチェス盤からは駒が一つずつなくなっていく。
果たして、犯人は誰なのか?
物理トリックの雄・北山猛邦が、
『そして誰もいなくなった』に挑戦――。
そうした趣向自体が、読者に先入観を抱かせる、
強烈無比なミスディレクションとなっています。
作中では、密室殺人、顔のない死体やバラバラ死体、そして人間消失といった、
本格ミステリのガジェットが満載で、それらに対峙する探偵たちも「物理トリック
談義」といったメタ的な議論を交えながら、あくまで古典的な物理トリックの解法
に基づいて事件の謎を解明しようとします。
しかし、本作のメイントリックは、そこにはないのです。
とにかく、叙述の細部にまで作者の精緻な技巧が、凝らされていて、
ぼんやり読んでいると、重要ポイントを読み飛ばす恐れがあるため、
絶えず注意深く、読み進めていかなければなりません。
本作は
『そして誰もいなくなった』を本歌取りした作品ですが、新本格の
『十角館の殺人』以後の作品だということも、忘れてはならないでしょう。
リアリティや犯行動機などはどうでもよく、ミステリによる
言葉のマジックを堪能したいという方は、ぜひご一読を。