首都圏ではおなじみの「R25」誌が創刊されたのは、2004年のこと。
発行元はリクルート。広告やテレビ業界で「M1層」と呼ばれる20〜34歳の男性をターゲットとした。東京23区を中心に1都3県4200箇所で、毎週木曜日に無料配布されている。ちなみに創刊時の部数は、50万部。なかでも相鉄駅の通路は、3万5000冊が1日でハケたことから、スタッフの間で「聖地」と呼ばれるようになっ
たとか。
いくらタダとはいえ、ラックに置かれたまま、いっこうに減らないフリーペーパーの類が多いなかで、この数字はすごい。本書はその成功にいたるまでを、創刊時の編集長だった著者が語ったものだ。
編集長だからといって、独裁的にふるまうのではなく、外部のスタッフと協働するにはどうすればいいのか。テレビなどに顔を出す名物編集長が好んでするような大ネタ自慢は、本書にはない。そのかわり、彼らなら書かない、こまごまとした準備段階の事情を明かしている。雑誌の編集に興味がなくとも、チームの運営に携わる立場の人だと、参考になることが多いはずだ。
たとえば、編集会議。大勢で意見を出し合うのはどこも同じだが、「R25」が他誌とすこし違っているのは、企画の発案者をすべて匿名にして議論する形式をとっていることだ。理由は、編集部がフリーランスの集まりという事情に関係している。フリーのライターや編集者は、企画が採用されてはじめて仕事になる。だから他人の企画が面白いと思っても、お金にしようとして、多少強引にでも自分の企画を通そうとする。水面下で、たがいの足の引っ張り合いが起きかねない。
そこで著者が考えたのは、まず会議に出席すること自体にギャラを払い、最低保障をすること。その上で誰の企画かわからなくすれば、腹の探り合いの場とならずにすむ。企画者本人にはプレゼンさせずに、みんなでネタをふくらませたりする。基本は、読者の目線にたって企画の良し悪しを吟味するということだ。
雑誌の編集に興味のない人でも、企画やチームワークといった面で多いに参考になる本です。