タイトルを見て、タイミングの良い出版テーマと感じた。鳩山首相のCO2の25%削減演説については産業界からも異論があるところだが、最近のCO2削減における家庭負担額の試算のやり直し指示では、温暖化に懐疑的ではない学者や機関からも強い反対があったばかりだ。加えてクライメート事件、最近の北半球の異常寒波である。本書はこれらの関心事について、詳細かつ平易に書かれている。
もとより政治家は環境の専門家ではなく、いわばど素人である。民主主義なのだから、何事も政治主導だと上から命令するのではなく、難しいことは専門家の意見を仰ぎ、400人の国会議員だけでは人手不足だから官僚も上手に使い、国民の生活が第一と言うのなら国益を考慮すべきである。現政権は、個別施策の問題点以前に、余りにも基本が抜け落ちている気がするが、このCO2の話も、極端な検討不足のまま、余りに安易に、重い発言をしすぎている。自国が酷く痛む目標を掲げる首相など世界のどこを探してもいない。
この本に書かれていることは、環境・科学・政治・外交に関して政治家・官僚の「既知の常識」でなければ困るし、マスコミも時機を逃さずちゃんと切り込んで伝えて貰わないと困る。環境問題は複雑なのだから、十分に検討し、調整を図るべきだ。そして、政治家も、官僚も、マスコミも、自らの本来あるべき社会的使命を果たすべきだ。高い給料を貰っているなら、なおさら「プロ」であってほしい。本書にあるように、諸外国では、イギリスのガーディアン紙、フィンランドのテレビなど、EUの利益に反することでも、ちゃんと事実や問題点を指摘する文化は残っている。
本書の場合、これまでの筆者の文面とちょっと違うなと感じたが、それは筆者の怒りさえ込められているからではないだろうか。まずは学者やマスコミが、誠実な姿勢に立ち戻ることを真摯に望む。