まず、誰もが抱くであろう不満を書き述べます。それを除けば、青春映画の王道を行く映画(それもロック・バンド!)として、非常にできのいい映画だと思います。
点物語の核であろうコユキの歌声。それを中盤以降幾度と無く引っ張り、最後までエアーボーカル&歌詞字幕。「観客の想像力にお任せする」という手法は原作ファンの夢を裏切らないことにはなるかもしれないけれど、ギターテクニック描写や、千葉役の桐谷健太のラップがよかっただけに、肩透かしというかこれでは『逃げ』に等しいと、やっぱり不満が残ります。どうやら原作者ハロルド作石さんの強い意向による演出らしいですが...。
本編自体はとても良かったです。原作未読で、そのイメージどおりかどうかは分かりませんが、キャスティングは上出来。BECKメンバーのバランスがよく、何度か登場するライブシーンもなかなか見栄えがイイ。「バンドのメンバーは誰でもいいわけではなく、奇跡のような出会いによって生まれるものだ」との竜介のセリフが、なんだかそれらしく聞こえる。
コユキの運命と必然に加え、竜介の過去と秘密、それぞれのメンバーのバックグラウンドなどもさらりと触れ、よく練り込まれた脚本と個性豊かな俳優、滑らかな語り口もいい。そこには青春のあらゆる情熱ときらめきが凝縮されていて、音楽が生活のすべてという若者たちの独特の世界観が見事に投影されていた。キャストの奮闘とカメラワークや音楽の使い方もなかなか良く、打ち込むものをみつけた喜びとかけがえのない仲間との友情が熱く伝わってくる。試練の克服については、ご都合主義的なところはありますが、青春映画ということでOKでしょう。
脇役では、カンニング竹山」がイイ味を出していた。(笑) オープニングとエンディングは、レッチリとオアシスなんて豪華だし、クライマックスのコンサートシーンは、前述のエアーボーカル以外は迫力ものでした。