著者は、「フードファディズム(食物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に信じたり評価したりすること)」という概念を、日本で最初に紹介したことで知られる。
体に良いとされるものとして、紅茶キノコ、酢大豆、大豆ココア等が過去にはブームとなったものだが、近年では健康情報“娯楽”番組が、フードファディズムに拍車をかけている。「あるある」の納豆捏造問題は記憶に新しい。何度もいっていることだが、「○○が体に良い(悪い)」という言説には、何かしらの宣伝めいたバイアスがかかっていると見た方が良いだろうし、宣伝を宣伝と見抜けずに信じてしまうようでは、怪しげな商法の犠牲者となる可能性が高い。
フードファディズムの一部として、「天然」「自然」「植物性」「有機」「無添加」といった雰囲気的なものが過大に評価され、「人工」「合成」「動物性」「食品添加物」を忌避しようとする思考が蔓延している。このように、良い(悪い)と決めてかかる二分法は、ニセ科学の方法論そのものと言える。どのようなものでも(例え「良い」とされるものでも)、過剰摂取は良くないのである。
“天然塩”“飲むコラーゲン”“酵素”といった体に良いと吹聴されるものにまつわるファディズムを解きほぐし、悪い方で取り上げられることが多い炭酸飲料や即席麺、ファストフードに関しても、そればかり摂り過ぎるのは栄養の偏りを招いて問題だが、足りない栄養を補いながら適量摂取する範囲ではかまわない、むしろ食生活を豊かにするものだと説く。食品添加物に関しては、健康被害に繋がる可能性は限りなく低いとするが、例えば、スーパーの野沢菜漬けが本来の野沢菜漬けとは形を変えてしまった、というような、「食文化の破壊」という観点でのマイナス面は指摘している。
結局のところ、“バランス栄養食”、そう名乗る食品に関して、本書の続編「『食べもの神話』の落とし穴」では、成分表示から「脂質が豊富に含まれている、ビタミンとミネラルが添加されたクッキー」と読み解いているが、“魔法の食品”など存在せず、様々な食品をバランスよく摂るということに尽きるのである。サプリメントに頼るなど本末転倒。同時に、「悪い」という言説に踊らされると、憎むべき「不安煽動・便乗ビジネス」が待ち構えているので、そのようなものにも惑わされないようにしたい。
日頃から懐疑論に接している人間には既知の内容も少なくないが、「『食べもの神話』の落とし穴」と合わせて、万人に広く薦めたい本と言える。