この本はさまざまなヒトのもつ個人差がどのくらい遺伝で決まるのかなどを述べたものですが、近年の研究など面白い情報が多い一方、著者の専門でもないテーマをいっぱい扱っているため話が一面的だったり不正確だったりすることが多かったです。
例えば、男性と女性に記憶力に有意差はないと著者は述べていますが、言語で記憶できる内容などさまざまな記憶に関して有意差があるとの報告もあります。著者は創造力には学習や教育が重要で、ノーベル賞受賞者がみな最高の教育をうけているなどと述べていますが、教育レベルは高すぎず低すぎずの人たちの中から平均して傑出した創造性が生まれてきたとの報告もあります。男女の認知能力の差が脳画像研究では追認されてないかのごとく述べていますが、やはり、解剖から、機能画像までさまざまな実験で言語などに関する男女の脳の働き方に差があることも報告されています。脳の大きさと頭のよさは無関係のようですなどといった話が通用したのも昔の話です。著者は認知能力の性差に関する研究はまだまだあまり行われてないなどといっていますが、その分野の研究者が聞いたら卒倒することでしょう。
最後に、著者は努力すれば大丈夫などというのは無用の期待を抱かせるのみと述べていますが、そんなことはありません。状況を自分の努力のコントロールによって何とかすることができるという信念は、ヒトが意欲を持ち続けることができる基礎であることが知られています。そして、著者のいうように音楽のような分野ですら才能より努力の重要性を報告する研究もあるなど何が努力でどうなるかなどまだまだ未解明のことも多いです。努力は無駄というようなことを推測で言うべきではないでしょう。