日本におけるハンセン(氏)病への対処方針の変遷について取り上げた一冊。
日本人の普通の発想は、「キケンな病気だから隔離する」というものである。しかし、時代によってこの発想が転倒する。隔離するなんていう発想が野蛮だ、人権侵害だ、キケンだ、という声がときどき大きくなる。1996年にらい予防法が改正され、隔離政策がようやく廃止となったときのマスコミの論調がそれだ。すなわち、隔離するという発想自体が病んでいるという考え方であり、「隔離という病」が認識される。「病気だから隔離」じゃなくて、「隔離することがちょっとおかしい、⇒病気」。
そして、武田徹はもうちょっと俯瞰している。大雑把に言うと、こんなにころっと発想が転倒するような発想・空気こそ危ない、病んでいる、というもの。今の日本には、ビョーキアレルギーと隔離アレルギーが同居しており、今のところ、隔離アレルギーが勝っていて、「危ないヤツは隔離しろ!!」みたいな発想こそが危ないと思われている。一方で、振り子が逆に触れた場合はこれはどうなるか分からなくて、過激な排除行動に結びつくかもしれない。これについては「解説」で香山リカが書いている通り。
Aという視点(危ないから隔離)と、Bという視点(隔離こそ危ない)とを対立させて、実はどっちも似たり寄ったりで、日本人の他者に対する基本姿勢から来ているのである、まとめてかかる手法自体はオーソドックスであるが、読ませる一冊である。満州国の話、フーコーの話、文学史の話等、幅広い脱線(?)もよい。