今年はAPEC/ABACの議長国は日本であり、先進国・地域が自由で開かれた貿易・投資を達成するとしたボゴール目標の達成年2010年に当たる。本書はそういう意味でAPECの意義、議長国日本の果たすべき役割を考える意味でタイムリーであり、その仮説も新鮮である。
著者は銀行在任中に実際にABAC活動に従事しており、民間の立場でAPEC首脳へ提言するというABAC(APECビジネス諮問委員会)の重要な役割に直接関わってきた経験と、彼の持つきめ細かい理論的思考力と分析力が一体となってここに本書が生まれたと言ってもよいのではないだろうか。昨年出版の「たかが英語、されど英語」もそうであったが、今回の本にも著者を突き動かす熱い何かが脈々と流れているように感じる。
本書は数ある地域協力・経済・政治統合のフォーラムを横断的に比較・検討した上で、「なぜAPECが東アジアないしアジア太平洋における地域統合のプラットフォームとしてふさわしいか」を理論的・実体的両側面から論証している。特に、ASEAN, ASEAN+3, EAS, APECのもつ関係力学の分析はおもしろく、今でも東アジアにおけるバランスオブパワーの重要性を再認識する必要がある点が強調されていて説得力がある。開かれた地域主義のメリットを維持しつつ、FTAAPのようなアジア太平洋域内での自由貿易圏を模索しているAPEC。今後の動向が注目される中、本書は地域協力・統合の持つ意義、課題を明らかにするとともに、日本の果たすべく役割をも示唆している点でまさに時宜を得た好著と言えよう。