「欲望」や「世間の常識」を捨てなさい、そこから真の自由、幸福が始まります―著者ひろさちや氏の一貫した人生観が本書でも語られます。「努力すれば報われるなんて、真っ赤な嘘」「将来のんびりするためにいま頑張る、という愚かさ」「生きがいをみつけようなんておやめなさい」等々、刺激的な表題の下、欲と常識にとらわれている凡人を叱咤し、自由、幸福へ目覚めるように諭します。このような”ひろイズム”論調は、著者の深い仏教知識と人生経験に裏づけされて、鋭く過激である一方で、ユーモアにもあふれ、独特なリズムで読者を引っ張っていってくれます。
読み進む中で、「恒心なければ恒産なし」という孟子の言葉を思い浮かべました。この言葉は、「恒産なければ恒心なし」と同じことを指しているのだと思いますが、世間一般の凡人にとって、恒産なくして上記の”ひろイズム”へ共感することはなかなか難しいことです。例えば、現今の氷河期に就活に追われる学生や再就職先の面接すらままならぬ人にとって、「生涯現役なんてバカな考えはおやめなさい」と云われても納得することは難しいのではないでしょうか。
このように万人にオールマイティな処方箋ではないにせよ、”ひろイズム”の「今ここ」の現状を徹底して肯定する視点が、救いのような安心と自信を与えてくれることも事実です。恒産有る人も無い人も、欲望を抑えて世間常識から自由に生きることを修行することを、優しく諭してくれる一冊です。